素天堂拾遺

2016-12-05

国書刊行会さんありがとう。『異形建築巡礼』発刊す!

四十年前、偶然出会った最初の驚きは栄螺堂だったろうか、それとも乞食城だったろうか。

以前にもこんな事を書いていた。

http://d.hatena.ne.jp/sutendo/20050805#p1

http://d.hatena.ne.jp/sutendo/20081227#p1

その外連味溢れる文体と、繰り出される建築という存在を大きく逸脱した存在の数々。黒死館という不可能建築の邸外に、やっと佇んだばかりの部外者にとって、眩暈さえ感じさせる連載だった。

はいえ遅れてきたものの悲しさ、結局その連載の全てに目を通すことは出来なかったし、その僅かなバックナンバーさえ今は手元に無い。

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それが今一冊の大きな書冊『異形建築巡礼』となって手の中にある。もしかすると記憶の中の美化かも知れないが、初出時はもう少し図版が多かったような気もするが、それもこうやって精細を極めた脚注によって、当時の情報を修正してくれていることで、その価値を高めてくれているのだから、ひとまずはよしとしよう。

2016-11-27

ハルマン『生者の埋葬』通販開始致しました。

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第二十三回文学フリマ東京で、ご好評頂きました『生者の埋葬』通販開始致します。黒死館古代時計室からお申し込み下さい。

黒死館殺人事件』に「生体埋葬」として登場する、フランツハルマンの早期埋葬をオカルト科学の見地からみた実例研究書。乱歩小酒井不木にも影響を与えた基本文献です、Buried Alive, 1895 絹山絹子訳。本邦初訳。108に及ぶ早すぎた埋葬の実例一種の滑稽な幽霊譚のようにも見えます。

併録した小酒井不木「死者の蘇生」は本邦における実例を補完した好エッセイです。

2016-11-23

文学フリマ23 ご訪問御礼

本日肌寒い中、多数のご訪問ありがとうございました。

心配していた新刊「生者の埋葬」も、お陰様で特殊な内容に拘わらず、思った以上の売り上げを記録することが出来ました。

この上はお礼と共に、お買い上げ下さった皆様の、熟読後の安らかなおやすみを、心よりお祈り申し上げることと致します。

2016-11-22

11/23文フリ初売情報 黒死館附属幻稚園 TRC Fホール カ-19

フランツハルマン『生者の埋葬』完訳本。A5 116p 900円。

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黒死館に「生体埋葬」として登場する早期埋葬を、オカルト科学の観点からみた実例集。付録につけました小酒井不木「死者の蘇生」は日本古典実例を含む、ハルマンの内容を補完する好エッセイです。

戦前科学画報傑作選別巻1」本シリーズ3冊に未収録だった、とんでも作品を収録。コピー誌です。青柳将「冷凍埋葬会社」、木津登良灰色にぼかされた結婚再版分28p200円造りました。

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昨年の冬コミのみの販売でしたので文フリでは初売りです。30部くらいなので会場のみの販売になると思われます。

また、既刊のうちダクダク2号錬金術ウェルズ「星の児」は残部僅少となりました。お早めにお求め下さい。

2016-11-04

取りあえず検索やってみました。vol.4

新青年版ではバルバロッサだったが、新潮社単行本では、スピノザに代わっている件。結局は新青年版には直接関係ないのだが、小酒井不木全集第七巻『医談女談』所収のエッセイ「死者の蘇生」中に、蘇生の例として、引用元は書かれていないが、フィリップ二世宰相であった大僧正エスピノラ、という記述が登場しているのを発見し、フェリペ二世関係するエスピノラを調べてみた。

バルバロッサについては既述だが、「黒死館」新潮社版本編には、十六世紀の中葉フィリップ二世朝、宗教裁判副長スピノザ KYL261 SML442 として、登場している者と推測できる。実際には語感が近いだけのように思われるが、フェリペ二世とエスピノラとの関連を調べているうちに小酒井記述誤記があることに気がついた。まず不木の表現通りのエスピノラAmbrosio Spinola, (1569-1630)は、フェリペ四世時に侯爵として登場するが、別名初代ロス・バルバセス侯爵であり、宗教的な功績より、軍人として名高く、十七世紀スペイン王室外交において、オリヴァレス伯爵対立していた人物であった。

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そこで、虫太郎の本文に近いフェリペ二世関係のあるエスピノザを調べて見た。

Diego de Espinosa y de Arévalo (1502–1572)はフェリペ二世時、スペインカトリック教会の重鎮であり、宰相として王の信任厚かく、最晩年(1566–1572)にはスペイン宗教裁判所の長官を務めていた。それ故、彼の死体ミイラ化して保存しようとしたところ、胸腔に入ったメスの衝撃で蘇生し、そのメスを振り払ったが、その傷が因となって死亡したというエピソードが残されている。

死者の蘇生エピソードといい、宗教裁判所の長官であることといい、虫太郎は不正確ではあるが、何らかの資料を参照していたものと思われる。

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で、こちらは不詳で済ませた人物ハルマン資料に登場していたと云うことの報告。

ボルドーの監督僧正(エピスコーポ)ドンネ KYL211 SML393

本文中ではドルムドルフの「死仮死及び早期の埋葬(ルビ:トツト・シヤイントツト・ウント・フリユーヘ・ベールデイグンダ)」に掲載されていると書かれていたが、実際には当該書籍の発行は1820年で、ドンネの仮死事件は文中のエピソード通りなのだが、事件は1826年のことであり、掲載については虫太郎の捏造であることが明らかになった。

Ferdinand-François-Auguste Donnet (1795-1882)

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少し長いが、小酒井不木による記述を以下に引用する。

 前世紀の末に、フランスの元老院で、埋葬の問題が議案となったことがある。そのとき、大僧正ドンネーは立ち上がって次の物語をした。

「一八二六年の夏の終わり頃のことです。ある教会には、会衆が潮のように集まって、ある若い僧侶説教をきいておりました。すると、どうした訳か、その僧侶言葉が突然不分明となったかと思うと、間もなく教壇の上にばたりとたおれました。 人々は驚いて駆けより、直ちに彼をその家に運びましたが、彼はすでに絶命しておりました。数時間の後、死を告げる鐘は悲しく響き渡り、葬儀の用意は万端ととのいました。

 ところが、死んだと思った僧侶は、その実生きていたのであります。彼の視覚は完全に失われていましたが、彼の聴覚だけは残存して、人々の話し声を聞きわけることが出来ました。けれども悲しいことに、彼は物を言うことも出来ず、手足を動かすことも出来ませんでした。

 彼の周囲に集まったものの話し声は、どれもみな彼を恐怖せしめました。医師は彼を診察して、彼の死を宣言し、明朝埋葬してもよいという許可を与えました。彼が平常尊敬している教会の監督は、床のそばに来て詩篇第百三十を誦しました。次いで彼の身体は棺の中に収められ、やがて夜となりました。

 すると弔問の客の中に、彼は彼の幼時から聞き馴れた人の声をききわけました。このことが彼に不思議な力を与えたのでありました。彼は必死努力を出して、うーんと唸ることが出来たのであります。

 それから後の混雑と歓声とは申すに及ぶまいと思います。彼ははや翌日教壇に立って、再び健康者として説教することが出来ました。

 今日、この元老院で、埋葬の問題が議せられるに当たって、私は諸君が、この四十余年前の一例を顧慮して、慎重な考案をめぐらされむことを切に切に希望します。と申すのは、そのときの若い僧侶こそ、かく申す私自身だったからであります」

2016-09-07

取りあえず検索やってみました。vol.3

結局再度負け戦のご報告。ヒュヘランドほどの画期的な項目には出会わず、間が空いてしまったが、算哲図書リストの中から何点か取り上げてみよう。

まず、デ・ルウジエの『葬祭呪文【ルビ:リチユエル・フユリアレイル】』に差し替えられた、ローデの「オルフィック密儀【ミステリオン】」。

ボーデン『道徳的痴患の心理【ルビ:デイ・ブンコロギイ・デル・モラリツシエ・イデイオチエ】』に差し替えられたのが、グロッスの「犯罪捜査法【ルビ:クリミナル・ウンテルジュフング】」。それぞれは候補が見つかっている。

そしてどうしても検索不能だったのが、レッサーの「死後機械的暴力の結果に就いて【ルビ:ユーベル・デイ・フオルゲ・デル・ポストモルクラー・メカニシエル・ゲヴルタインヴイルケンゲン】」に差し替えられた、バルドヰン博士の【死刑立会人の回想【エ・ウィットツ(ネ*)スズ・メモリー】」なのだ。

推測可能な原綴は著者BaldwinまたはBaldouinだと思う。問題の書名は“a witness's memory”。普通に読めば、witnessは目撃者だが、立会人との意味もある。然も虫太郎は、わざわざ死刑の語彙を付け加えている。禍々しさを強調するものかも知れないが、原綴はあまりにもシンプルな語彙であり検索さえ不可能だった。

2016-08-22

取りあえず検索やってみました。vol.2

あったあったとばかりはいえないこの作業。続いては探せなかった人名、二件。本文は調査済みの、

リムの「古代独逸詩歌傑作に就いて」かファーストの「独逸語史料集」でも、【第二扁】についての手稿での人名

“ヂュストンか(ブ)ローブレンツでも、言語学の蔵書があれば”

さてドイツ言語学にこのような人名は登場するのであろうか。諸賢のご協力を乞う。

2016-08-21

取りあえず検索やってみました。vol.1

作業で残った不明語彙の一つに、フランスの心理学者シャルコーのエピソードとして取り上げられたケルンの聖ゲオルグ事件だが、手稿によると記述者はヒュヘランドとされ、地名もドウイスオルグになっていた。ゲラ校の際虫太郎によって現行のシャルコーに変えられたものだ。

“手稿版の語彙にまで手を出すのは”とも思ったのだが、このあんまりな語彙に興味を惹かれて調べてみた。ところがそのままの語彙で、早稲田大学の古典籍総合データベースの蔵書にあることがわかった。残念ながら一枚もののチラシであったが、きっかけができたので、もう少し調べてみることにした。幸い原綴が発見できたので、十八-十九世紀ドイツの医学者フーフェランドC.W.Hufelandにたどり着き、幕末期の洋学者、緒方洪庵などによって邦訳もされていたことが判明した。

f:id:sutendo:20160821142909j:imageこれがその人

それにしても、虫太郎の情報収集力を再認識した。

さてもう少し手稿語彙に取り組んでみよう。

2016-08-13

コミケ90 ご来場ありがとうございました。

BLの老舗大手サークルさんと隣り合わせるという意外な配置に驚きながら、沢山のご訪問を頂きました。持ち込んだウェルズの「星の児」もほとんど売り切りのご好評を頂きました。ありがとうございます

2016-08-08

コミケ90 夏コミ1日目東ク07b黒死館附属幻稚園出展します。

今回は「戦前『科学画報』小説傑作選別巻2 星の児 生物学的幻想曲」H・G・ウエルズ晩年作品ナチス台頭、独軍による英国本土爆撃の直前という危機的状況の中で書かれた異色作です。

昭和13年『科学画報』全9回掲載分(大平洋一訳)+未掲載の2.5章をあらたに訳出しました。

当時の最先端の科学的知見「宇宙線」の人体への干渉を盛り込み人類史の革新予言した、もう一つの火星人との「宇宙戦争作品です。

f:id:sutendo:20160426070134j:image A5 156p 1000円。

われわれの調査では戦後翻訳された様子はありませんが、後期ウェルズ観念的な面が如実に表れたもので、ある意味噴飯文庫的な見本といえます。

また、黒死館逍遥総集編CDROM、「黒死館学園入試問題集」、楽しい絵葉書集、虫太郎資料集ダクダク、戦前「科学画報」小説傑作選等、バックナンバー色々取り揃えてお待ちしております。今回もよろしくお願い致します。

2016-07-24

キネマ博物誌 −映像による万有知の構築

丸の内キッテ2F「インターメディアテク」ACADEMIA、東大の旧階段教室再現した会場でIMTカレッジ。西野嘉章氏と荒俣宏氏によるイヴェントを聴講してきました。ドイツで形成された映像コレクションの上映に対する、二時間の予定を大幅に超える古今百般の分野を縦横に語り尽くすノリノリの対談。

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 二千本以上に及ぶ短編科学映画アーカイブは、生物学・民族学技術科学の三分野に区別され、半世紀前の世界の姿を留めています。微生物の反応など肉眼で捉えられない現象映画技術によって可視化すると同時に、失われていく社会慣習や廃れた技術を記録するという映像人類学的な役割果たしています。(IMTホームページより)

以上十本の民族学、自然科学のジャンルから、対象を選ぶ以外は一切の演出をしない禁欲的な映像は、見る人のある種の感性を引き出すニュートラルな素材のすごみを見せて、現代の知を代表する二人から、存分にその持っている情報を引き出すという目的を達成出来たのであると思う。

2016-06-06

虫本 キリシタン関係

長い付き合いといっても、そうそう巡り会えるはずのない虫本だが、今回は黒死館本文が、虫太郎によるフィクションであることの裏証明になる本が手元に来た。

青陵随筆 濱田耕作 座右宝刊行会 1947

戦後早い時期から美術書の出版に取り組んできた貴重な書肆から出された、濱田青陵最後の遺著。青陵は考古学の重鎮であったが、その興味の範囲は広く建築から、宗教学にまで及んだ。建築に関しては次の年に『橋と塔』が戦後再刊されたが、昭和初期のキリシタン関係書は残念ながら再刊されることはなかった。

黒死館に深く関わる天正少年使節について、参照することの多かったその『天正遣欧使節記』から漏れたと思しいキリシタン関係随筆が二篇、この書に収録されいる。「天正遣欧使節の話 特に其の歓迎舞台面に現れた女性」に書かれたビアンカ・カペッロについての詳細、初出昭和八年四月『人情地理』と、「天正遣欧使節への贈答品」のリストは貴重。その中には勿論秀吉への献上品クラビチェンバロの詳細も登場はするけれども、重要なのは彼の聖宝類という記述にふられたレリケというルビだ。初出は昭和六年二月雑誌『徳雲』、もしかするとこれらが虫太郎のネタだったのかも知れない。

もう一冊も戦後のもの。『聖ザビエルの生涯と右腕の由来・奇蹟諸文献』吉浦盛純 鎌倉ザビエル会 1949

日本渡来四百年記念と扉に入った百ページに満たない小冊子だが、ザビエル聖人の聖遺物、右腕に関する数少ない文献。

ザビエル没後の経緯と右腕の起こした奇跡記述は興味深い。

篠田真由美篠田真由美 2016/06/13 08:40 おおおおおっ、そ、それは・・・

ところで、いま上野の国立博物館にティントレットが描いた伊東マンショの肖像画が日本初公開ですぜ。

sutendosutendo 2016/06/13 21:01 この間、見てきました。凜々しくてよかったですよ。
ルネサンスのイタリアに日本人の肖像があるのはうれしいですね。
上記の随筆にも濱田は書いてますが、当時は噂だけだったようですね。
できたら、四人の集団肖像画を見たかったですね。

2016-05-04

「星の児」H・G・ウエルズ 通販開始です

第22回文学フリマ多数のご訪問ありがとうございました。

最後に残した大物、ウェルズの異色作「星の児 生物学的幻想曲 戦前『科学画報』小説傑作選別巻2」、通販開始致します。文フリ告知で既報の通り、初期のストーリー重視の作品とは大きく変わった作風になりました。掲載誌の事情で中断した初出に、未訳部分を絹山が今回補充して完結しております。

初期の名作「宇宙戦争」の反省を踏まえた火星人精神的な地球侵略が書かれていますが、火星人話題が中心でありながら火星人は一度も登場しません。ハラハラドキドキこそありませんが、円熟期を過ぎたウェルズのノラリクラリとした会話が主とした物語は、それなりに楽しんでいただけると思っております。

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A5 156p 1000円 送料180円

ご注文はこちらへ。どうかよろしくお願い致します。

2016-04-26

5/1 文学フリマ東京22 チ15 出展致します。

今回の新刊は「戦前『科学画報』小説傑作選別巻2 星の児 生物学的幻想曲」H・G・ウエルズの晩年作品です。昭和13年『科学画報』全9回掲載分(大平洋一訳)+未掲載の2.5章をあらたに訳出しました。

ウェルズということで、初期短編のしゃれたアイデアストーリーを期待される方には、ちょっと戸惑われる作品かもしれません。

当時の最先端の科学的知見「宇宙線」の人体への干渉を盛り込み、人類史の革新予言したもう一つの火星人との「宇宙戦争」であり、ナチス台頭、独軍による英国本土爆撃の直前という危機的状況の中で書かれた異色作です。

われわれの調査では戦後翻訳された様子はありませんが、ウェルズのもつ観念的な面が如実に表れたもので、ある意味噴飯文庫的な見本といえます。

f:id:sutendo:20160426070134j:image A5 156p 1000円。

また、黒死館逍遥総集編CDROM、「黒死館学園入試問題集」、楽しい絵葉書集、虫太郎資料集ダクダク、戦前「科学画報」小説傑作選等、バックナンバー色々取り揃えてお待ちしております。今回もよろしくお願い致します。

会場は東京モノレール東京流通センター前下車。東京流通センター 第一展示場、十一時開場、十七時まで。

2016-01-03

戦前『科学画報』小説傑作選別巻1通販幻稚園分完売致しました。

新刊戦前『科学画報』小説傑作選別巻1」新刊通販のご注文受付は終了致しました。

多数のご注文ありがとうございました。六日以降は西荻窪「盛林堂書房」さんへお問い合わせ下さい。また神保町の「古書いろどり」さんでも営業再開後、取り扱って頂きます。そちらもよろしくお願い致します。

内容はこちらでごらんください。