タレ日記 このページをアンテナに追加 RSSフィード

タレ日記

180706

tally2018-07-06

[] 15時17分、パリ行き  15時17分、パリ行きを含むブックマーク  15時17分、パリ行きのブックマークコメント

その時、3人の若者が乗ったのは運命の列車だった。

これは、誰の日常にも起きる現実。

原題:THE 15:17 TO PARIS

監督:クリント・イーストウッド

脚本:ドロシー・ブリスカル

撮影:トム・スターン

編集:ブルー・マーレイ

美術:ケヴィン・イシオカ

衣装:デボラ・ホッパー

音楽:クリスチャン・ジェイコブ

原作:スペンサー・ストーン / アレク・スカラトス / アンソニー・サドラー / ジェフリー・E・スターン『The 15:17 to Paris: The True Story of a Terrorist, a Train, and Three American Soldiers』

Based on a True Story.


公開時、ドラちゃん(妹)が「今年ベスト級」と評価していたので、

どうしても劇場で観たかったのですが、叶わずDVDで。


たぶん観た人全員が思うであろう、「イーストウッドここまで来たか!」

まるで映画で、世の中の「奇跡」と呼ばれるできごとの実態を

解き明かしてしまおうとするような試み。

ハドソン川の奇跡』(id:tally:20160928)で描いた

「プロは奇跡を起こさない」という面をさらに深く掘り下げて、

「人生のすべての道程に意味がある」とするような実験映画だった。

日々通り過ぎていってしまうニュースの意味や背景を考えさせるという意味では、

万引き家族』(id:tally:20180622)に通じるものもあるかも。


映画を観終わってぐっとくるのが、

イーストウッド映画史上最短のランニングタイム94分の割り振り。

とくにスペンサー 不遇の日々と、3人の観光パートの尺の長さ。

観客を弛緩させ、倦ませるのに不可欠な尺であり、

ぼんやり「こんなことしてて意味あるのかなー」という心境になるのは、

当時のスペンサーの心情に同化することでもある。

「信仰」「SERE」「柔術」などのピースを周到に配置しながら、

3人のありふれた日常に観客が完全に平和ボケしきったところで、

突如スタートする列車パートのスピード感よ。

鳥肌が立ちました。


いま、意に染まない場所で、不本意な状況に置かれているとしても、

それが無駄になることはない。

待ったなしのタイミングで、為すべきことを為せ。

御大(87歳)のなんともパワフルでありがたいメッセージよ。もはや神視点かよ。


主演の3人も、ご本人ならではの実在感・ボンクラ感がチャーミングだし、

自身を演じてほしかった俳優が、

ザック・エフロンクリス・ヘムズワースマイケル・B・ジョーダン

ってラインナップもまた良すぎる!


★★★★

180704

tally2018-07-04

[] ブリグズビー・ベア  ブリグズビー・ベアを含むブックマーク  ブリグズビー・ベアのブックマークコメント

僕には、君がいる。

25年間隔離されていた青年の心は常識を飛び越えてまわりの人びとも変えてゆく……

ちょっぴりせつなくて可笑しいハート・ウォーミングストーリー。

原題:BRIGSBY BEAR

監督:デイヴ・マッカリー

脚本:ケヴィン・コステロ / カイル・ムーニー

製作・プロデューサー:フィル・ロード / クリストファー・ミラー


ここのところ、『万引き家族』(id:tally:20180622)、

『ワンダー』(id:tally:20180626)と観てきて、3本目も!

「世の中こんなに『正しさ』に疲れきっているのか…、

こんなに『やさしさ』を求めているのか…」と

ちょっと苦笑してしまいましたが、3本目のこれが一番すきかな。


設定がちょっとうるさいけれど、

基本的には王道の「青春成長譚」「親離れ子離れ」の話だと思うし、

「人が生きるために必要な『物語』」の話だと思う。


まず、すごいなーと思ったのが、主演(兼脚本)の

カイル・ムーニーが序盤きちんと「子ども」に見えること。

その奇想天外な生い立ちのおかげで、精神年齢が肉体に追いついていないゆえの、

外の世界に飛び出した直後のあどけない・よるべない表情よ。

その後急ピッチでの成長を余儀なくされるものの、

刺激を吸収してぐんぐんと青年らしくなっていく様がまぶしい。

はじめてのコーラ。はじめての映画。つながったネット回線。

自分の好きなものをはじめてDope as shitと言ってもらえたときの

目も眩むような多幸感。


全員善人ぶりが鼻につくという意見もわかるけれど、

善描写がどれも殺人的にぐっとくるもので……。

「人生初のパーティーか?」とかけられた言葉。

「ヘタクソな歌」を「でもいいね」と認めてもらう安心。

親のやりたいことリストは友だちと実行されてしまうもの。

「古い親」の元に黙って送り出してくれる「今の親」。


ラストのブリグズビーは、まるで『インサイド・ヘッド』(id:tally:20150819)の

ビンボンさんで、ただのイマジナリーフレンドであっても泣けるのに、

それが「古い親」の創作をアップデートした自分の物語の化身で、

なおかつその「古い親」をマーク・ハミルが演じている、って

どれだけ盛ってくるんだ!とただただ涙を流しました。


★★★★

180626

tally2018-06-26

[] ワンダー 君は太陽  ワンダー 君は太陽を含むブックマーク  ワンダー 君は太陽のブックマークコメント

やさしさの半分は 勇気でできている

少年オギーがヘルメットを脱いだとき、見えなかった奇跡が待っていた

原題:WONDER

監督・脚本:スティーヴン・チョボスキー

脚本:スティーヴ・コンラッド / ジャック・ソーン

撮影:ドン・バージェス

編集:マーク・リヴォルシー

美術:カリーナ・イワノフ

衣装:モニク・プリュドム

音楽:マーセロ・ザーヴォス

原作:R・J・パラシオ『Wonder(ワンダー)』


予告編の限りでは、絶対に観に行かないタイプの映画に思えたが、

『ウォールフラワー』(id:tally:20131217)のスティーヴン・チョボスキー監督作となれば!


良かった!

ひとつ前に観たのが、「社会に対するメッセージを伝えるために映画を撮ったことはない。どんなメッセージかは受け取る側が決めること」「映画は何かを告発するとか、メッセージ伝えるための乗り物ではない」という是枝監督の作品だったこともあり、

“Choose kind."という臆面も無いストレートさは、ズバーンと心を撃ちました。


f:id:tally:20180627114352j:image


基本的には『ウォールフラワー』と共通点が多く、

監督の手腕がいかんなく発揮されていると思う。

すなわち少年/青年が脱皮するまぶしい瞬間を捉えた成長譚であり、

オギーを中心に、視点が姉→姉の親友→オギーの親友と

移り変わっていく構成は、

『ウォールフラワー』でも見られた「脇役・端役にまで注がれる愛情」と

「登場人物全員に宿る物語」が感じられてぐっときました。

すべての視点が子ども目線で、親の視点は描かれていないけれど、

親の立場からすると、

どの子どもの親の目線にも立ってしまい涙が……。

オギーのふとんカバーに溢れ出る愛情よ!


だからこそ、ジュリアンの顛末がとても性急で

不自然に感じられたのが…ものすごく惜しい……!

『もうひとつのワンダー』の存在を知って、合点がいきましたが、

一本の映画として、ジュリアンのチャプターは絶対に必要だったと思う。

オギーと陰陽の関係にあるジュリアンを退場させてしまうことは、

この映画のメッセージを歪めてしまうことだと思いました。

★★★

180622

tally2018-06-22

[] 万引き家族  万引き家族を含むブックマーク  万引き家族のブックマークコメント

盗んだのは、絆でした。

2018年度カンヌ国際映画祭パルム・ドール

監督・脚本・編集:是枝裕和

撮影:近藤龍人

美術:三ツ松けいこ

衣装:黒澤和子

音楽:細野晴臣


「invisible」という言葉を巡ってというメッセージを読めばわかる通り、

是枝監督は立派な人であり、様々な角度から熟考した自分の考えを

正しい言葉で語ることができる人である。

そんな監督の「集大成」的作品が、パルム・ドールを受賞したことは、

とてもすばらしいことだし、日本の誇りだと思う。


実際、映画もオール5の優等生だった。

「家族」「善悪/正しさ」「ニュースに表れてこない真実」など

多方面から語ることができる設定、その描き方のバランス、

映像や美術や音楽のうつくしさ、など

全方位において隙無し。


とくにキャスティングは、メインキャストに圧倒されるのはもちろん、

池松壮亮が映った瞬間の「池松壮亮ここにあり!(笑)」感とか

『きみはいい子』で「こちら側」だった高良・池脇コンビが

「あちら側」へ、とかニヤリとしてしまうようなほのかな毒っ気もあり、完璧。

また、個人的には「invisible people」という側面よりも

もっと普遍的な「誰しも最初のメンターは親」

「親の神通力が消える瞬間」という側面にぐっときたり……したのですが……。


この映画を是枝作品の中でとりわけ好きか、

また後々まで自分の心の中で輝き続けるか、と

問われると、「うーん」と唸ってしまう。

非常に情報量が多く、かつ非常に教科書的というか

常に「このシーンはどのシーンと呼応しているでしょう?」

「この時の登場人物の心情は?」「これは何の暗喩?」

「心情の変化がわかる場面を挙げよ」

とテストを解かされているような、

またその裏に百点満点の回答の存在を意識してしまうような、

居心地の悪さがあり、

あまり映画にすきまや余韻を感じられなかった。

それはもちろん是枝監督の本意ではなく、わたし側に問題があると思うのだけど。


余談ですが、うちの子どももお麩好きなので、

あのシーンはぐっときました。

★★★

180610

tally2018-06-10

[] 犬ヶ島  犬ヶ島を含むブックマーク  犬ヶ島のブックマークコメント

新しいのに懐かしい、“日本”が舞台の、ワンダフル!!アドベンチャー

原題:ISLE OF DOGS

監督・脚本・原案:ウェス・アンダーソン

原案:ロマン・コッポラ / ジェイソン・シュワルツマン / 野村訓市

撮影:トリスタン・オリヴァー

編集:レイフ・フォスター / エドワード・バーシュ

音楽:アレクサンドル・デスプラ


よかったー!めくるめく情報の奔流にのみこまれる快楽よ!

ウェス・アンダーソンによる、文句のつけようがないビジュアル!

しかもそれがわたしも大好きな、日本映画と犬への愛に裏打ちされているという奇跡!

ただひたすらにうれしいなー、とニコニコしながら観てしまいました。


目に涙をためる犬。口笛に口笛で応える犬。

うまれたての子犬。桜の花びらがふりかかる犬。

目頭があつくなるような極上の犬描写は枚挙に暇がないし、

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せりふの間や義理人情のエッセンス、とくに幕切れの切れ味などは、

「古い日本映画*1完コピか!」と感心してしまいました。

悪役がくるっと改心したり、だらだら引き延ばさないでバッサリ終わるあたり。


あと日本人だからこそ日本描写が二重三重に楽しめる。

ウニ県メガ崎市!太鼓トリオ!

乾杯からの一本締め/寿司/手術シーンのおかしみといったら!

日本人に対してここまでストレスが取り払われているのは、

きっと野村訓市の力に依るところが大きいのではないか、と。


野村紘子先生の息子にしてSFPの幼馴染。

東京トップクラスの文化資本強者!

白旗上げてインスタもラジオも追いかけているのですが。

BACK NUMBERを読み返してみると、二度楽しかったり。


早くDVD買って観返したいよ〜〜〜


★★★★

*1:とくに黒澤映画

180607

tally2018-06-07

[] レディ・バード  レディ・バードを含むブックマーク  レディ・バードのブックマークコメント

羽ばたけ、自分

青春の輝きと痛みを知る 誰もが共感して心震わせる

これは、あなたの物語

原題:LADY BIRD

監督・脚本:グレタ・ガーウィグ

撮影監督:サム・レヴィ

編集:ニック・ヒューイ

プロダクションデザイン:クリス・ジョーンズ

衣装デザイン:エイプリル・ネイピア

音楽:ジョン・ブライオン


ばっちりターゲットにされている自覚があり、

期待しすぎて心配だったのですが、杞憂でした。

きっちりストライクに入ってきた。

ありがとう!愛してる!グレタ・ガーウィグ!

今のところ、今年最も「わたしの映画」だと思います。


『ローラーガールズ・ダイアリー』(id:tally:20100603)、

『スウィート17モンスター』(id:tally:20170510)系譜の、

愛すべきぼんくら女子高生の成長譚であることは予想していたものの、

長い間仮タイトルが『Mothers and Daughters』だったとグレタが語る通り、

予想以上に王道の母娘モノでした。


自分は母歴2年弱、マインドは大学生のままということで、

マリオンにもクリスティンにもつまされるところがあり、

きもちがいそがしい。

娘に「Best version of yourself」であってほしいと願うきもちと

今のありのままの娘を「Best version」であると受け容れたいきもち。

母親の呪いはデフォルトだけど、最高のドレスを見つけてくれるのも母親。

何も言われなくなってはじめて、「Pay attention」=「Love」という言葉に合点がいく。

マリオンが一周して空港へと戻るシーンには涙がこぼれ、

結局見送りに間に合わなかったのが、本当にいいなと思いました。

遠きにありて思うふるさとの描写も、レディ・バードがクリスティンになるラストも、

奇をてらわないストレートさにぐっときました。


初監督作ということで、まだ荒さが目立つし、

散文的だったりもするけれど、

登場人物全員に事情や物語があって一面的でないのが、

基本的に信頼できる……と思いました。

なにしろキャストがすばらしすぎる!

主要キャストはもちろん、最旬のティモシー・シャラメにルーカス・ヘッジズ。

ジョナ・ヒル妹のかわいさ、たまらん!


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★★★★

180601

tally2018-06-01

[] ファントム・スレッド  ファントム・スレッドを含むブックマーク  ファントム・スレッドのブックマークコメント

オートクチュールのドレスが導く、禁断の愛。

ダニエル・デイ=ルイス引退作

1950年代、ロンドン。

天才的な仕立て屋は、若きウェイトレスをミューズに迎える。

運命の糸がほつれ、絡み合い、ふたりは思いもよらぬ境地へとたどり着く―。

原題:PHANTOM THREAD

監督・脚本:ポール・トーマス・アンダーソン

編集:ディラン・ティチェナー

プロダクションデザイナー:マーク・ティルズリー

美術:デニス・シュネグ / クリス・ピーターズ / アダム・スクワイアーズ

衣装:マーク・ブリッジス

作曲:ジョニー・グリーンウッド


とてもおもしろかった〜〜。

崇高さと俗悪さが分かちがたく結びついてしまうバランスが、

『存在の耐えられない軽さ』のようだ、と思いました。


PTA作品だと、『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』に近い感触。

ともすればメロドラマ(今回は笑えるホラーの域に達した共依存ゲーム)に陥りそうなストーリーを、

美麗な*1音楽と衣装でぐっと底上げする感じと、

もはや観客の共感など受けつけない、主人公たちのすがすがしいまでの突き抜けっぷり。

そこまでたどり着かないと落ち着かない男女の愛憎というものに恐れおののきつつも、

「もう好きにしてよ〜」と笑ってしまう。

今回、TWBBの「ミルクシェイク」に相当する「バターソテー」にわたくし爆笑してしまいました。

『ミザリー』もびっくりだよ!


しかし、ただの狂気沙汰/エクストリームな話で終わらないのは、さすがPTA。

母の呪いを解いてくれたかのように見えた女が

実は呪いを引き継いだのだということがわかる流れの

心の温度の下がり方!

そして、なんと言っても白眉なニューイヤーズ・イヴのシーン。

男が忌み嫌う俗悪の極みのような場所へ、

かつて同志と感じた思い出を踏みにじるような装い*2の女を追ってゆく、という

パワーバランスが完全に逆転してしまう、目を覆いたくなるような悲惨なシーンを、

このうえなくうつくしく、ロマンティックに描いてみせる。


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その時のダニエル・デイ=ルイスに抱く感情の複雑さよ!

泣き笑いと胸がしめつけられるようなせつなさ。

幸福と不幸の境が溶けていくような描写は、圧巻でした。


★★★★

*1:TWBBで言えば重厚な

*2:しかも絶対に故意に