戦争を経済で眺める
早朝6時に目が覚めたので、そのまま読書タイム。長男S氏が起きてくる前に読書タイムを取るのが最近のパターン。
ポール・ポースト『戦争の経済学』を読了。経済学の教科書として使えるように、というコンセプトで書かれている本なので、マクロ経済とミクロ経済の基本的な用語をレビューしている。その題材に戦争を使っている、というもの。アメリカの軍産複合体の話や、不景気になると戦争をして戦争特需が起こるのか、という話などケーススタディとして非常におもしろいと感じた。
貧困や資源採掘などの経済状況が紛争の真の原因である、というのはよく言われること。でも、そこに機会費用や教育がどのように関係してくるか、というのをしっかり数字で出してきているのは初めて僕は読んだ。なるほど、こういうアプローチもあるのか。例えば、
機会費用(ある行動をとるためにその人があきらめる次善の行動)もまた、貧困と紛争の相関を説明できる。例として、その国の男性の教育水準を考えよう。男性の通学年数は、武力紛争といった高リスク行動に従事する男の機会費用をはかる指標となる。男性の教育水準が高いほど、その人は武力紛争に従事しにくくなる。だから男の教育水準がちょっと上がるだけで、紛争リスクは下がる。
教育と関連して、雇用機会という機会費用もある。政府軍はゆっくりとまとまりを作ればよいけれど、反乱軍は一気にまとめあげなくてはならない。結果として、急成長が必要な反乱組織は労働市場の状態に敏感になる。仕事がたくさんあれば、反乱組織は十分な人材を手早く確保できなくなるから、反乱も起きにくくなる。(p.269)
僕は、教育は、(1)「戦争をしない」という意識づけ、(2)「戦争以外に選択肢があるはずだ」と模索するメンタリティの醸成に有効だと思って今の仕事を選んだのだけど、それ以外に教育水準を高めることによって武力紛争に別の側面から関わることもできるのだなぁ、と。[→blog@Yui 戦争の経済学]
- 作者: ポール・ポースト,山形浩生
- 出版社/メーカー: バジリコ
- 発売日: 2007/10/30
- メディア: ハードカバー
- 購入: 21人 クリック: 289回
- この商品を含むブログ (71件) を見る
こんなふうに教えたい/教えられたい
結城浩『数学ガール』を読了。僕は数学が本当にできなかった。壊滅的にできなかった。高校時代の2年間半=数学があった時期には定期テストの点数はいつも1ケタだった。0点も何度もとった。そんな僕でも楽しめるかと思いつつ読んだけど、楽しかった。正直、数式はあまりわからない。だから、内容的にも半分くらいしかわからない。でも、フィボナッチ数列だったり場合の数のあたりは、単純に考える楽しさがあった。あとはキャラ読み、ですけどね。僕はミルカさんがいいな。
ストーリーの中に出てくる会話の1つ1つが、「教える」ってどういうことか、「考える」ってどういうことか、「勉強する」ってどういうことか、見つめ直すきっかけになります。
「テトラちゃんは、自分で考えようとしただろう?それは大事なことだ。たとえ、何も見つけられなかったとしても。懸命に考えたからこそ、その後、僕が話した内容がすぐに理解できたんだ。それを忘れちゃいけない。」
テトラちゃんはじっと聞いている。
「きみは数式を何とかして読もうとする。それは、とてもすごいことだよ。数式が出てきたとたん思考停止する人はとても多い。数式の意味を考える以前に、そもそも読もうとしないんだ。もちろん、難しい数式の意味はわからないことが多いだろう。でも、全部はわからないとしても<<ここまではわかった。ここからわからない>>と筋道立てて考えるべきなんだ。<<だめだ>>と言ってたら読まなくなる。考えなくなる。数学なんて役に立たないさって嘯くことはできる。でも、そのうちきっと<<役に立たないから読まない>>ではなく<<役に立てたくても読めない>>になってしまう。数学を、酸っぱいブドウにしてはだめだ。チャレンジするテトラちゃんはとてもえらいよ。」(p.197)
これ、僕だ(笑)「役に立てたくても読めない」よ。こんなふうに教えてくれる人が近くにいたらいいと思う。
「僕たちは好きで学んでいる。先生を待つ必要はない。授業を待つ必要はない。本を探せばいい。本を読めばいい。広く、深く、ずっと先まで勉強すればいい。」(p.220)
そのとおりだ。素敵な本だった。結城さんの日記では、よくお子様といろいろな質疑応答をしている様子が書かれている。僕は数学的なことでは質疑応答はできないけど、他のことでならば質疑応答はできる。そうしたことをできる親でありたい。「どうしてだと思う?」「他にはないかな?」「どうしたらいいと思う?」…たくさんの問いかけを、息子にしてあげたいと思う。そんな気持ちにさせてくれたこの本は、僕にとっては意味のある本だった。数学、っていうのを離れて、「導く人」と「導かれる人」の関係のモデルになりえる、と思ったんだよね。いい本だった。ありがとうございました。[→blog@Yui 数学ガール]
- 作者: 結城浩
- 出版社/メーカー: ソフトバンククリエイティブ
- 発売日: 2007/06/27
- メディア: 単行本
- 購入: 56人 クリック: 1,006回
- この商品を含むブログ (973件) を見る
成長スピード、すごい!
長男S氏は、ここ1〜2週間でめざましい成長ぶり。4つ足で立てるようになり、なんだかはいずりまわって移動ができるようになり、方向転換ができるようになり…。早いなぁ。行動範囲が広がり、意思表示を顔でしてくれるようになり、どんどんどんどん可愛くなる。もう、ヨロヨロしている後姿がCuteです。
この子に、素敵な未来を見せてあげるために、自分は何ができるだろう、と考える。この子のためになることを、できるだけたくさんしてあげたい。そのために、今の自分に何ができるか、これからの自分に何が必要か。考えなくてはならんよね。それからそれから家族として何ができるのか。
夜は家族でバースデーケーキを食べました*1。いつものナッシュカッツェのケーキ。ザッハトルテをいただきました。うまいんだよー、これが。恒例となりつつあります、年齢のナンバーキャンドルを立てて(笑)もう33ですね…。今年の抱負は…これまでは仕事と家庭と、という感じで両輪にしていたのですが、今年は妻と息子を大事にする、という両輪で(笑)いや、当然そこには自分自身の充実が不可欠だとは思っているのですけどね←このへんがわがまま(笑)
*1:正確には夕方に1個ずつ食べ、夜にさらに1個ずつ食べた