映画2008年上半期 僕の勝手に映画賞

今日は過ごしやすい1日になりそうだから、覚書のように上半期上映が開始された中から思い入れが強かった映画を振り返ってから出かけることにしよう。

今年上半期に観た作品の中から、短文感想含めて良かった映画を厳選して10本。50音順。もし見かけた際は素人の自己満足的な覚書だと理解の上で見てやってください。

アフタースクール

監督内田けんじ 主演大泉洋
サービスデーだったとはいえ、かなり席数の多い映画館でも一度は満員で入れず、次まで待ってもほぼ満員の映画館が、同じところで笑って同じところで驚き沈黙していた奇妙な一体感が忘れがたい。
主要キャスト3人のみならず、常盤貴子伊武雅刀までもが絶妙のキャスティング。脳をフル回転させられるようなスピード感溢れるドンデン返しの応酬の中で、終盤で大泉洋佐々木蔵之介に伝えるシーンに強いメッセージが込められていて唸った。

歩いても 歩いても

監督是枝裕和 主演阿部寛
単なる、平凡な家族が集った1日を「こういうこと、あるよな」と思わせる笑いを交えていくだけでなく、「罪の無い、人のそんな感情が、時にはちょっと残酷なものにも見えてしまう」というようなシーンが、親近感が持てる家族のドラマで出てくるため、かなり真実味を帯びていてドキッとさせられた。
出演者のバランスが絶妙で、その中でも樹木希林が特に素晴らしく、蝶を追うシーンは感動した。
「人生は、いつもちょっとだけ間にあわない」描写で伝えてくれたラストを含めて、まさにそうだと思い至った。

イースタン・プロミス

監督デヴィッド・クローネンバーグ 主演ヴィゴ・モーテンセン
心の準備が許されないかのような強烈なオープニングから一転、ストレートで王道の美しい映画だった。ラストは静かな感動が待っていた。ギャングの世界のみならず、「産まれてくること」とはといったことを振り返ることを促された。サウナのシーンは大迫力で圧巻。今年随一の名シーンだった。人間一人の表現力って限りないのだな。

ぐるりのこと。

監督橋口亮輔 主演木村多江
自分も生きてきた10年史を振り返っているということで、素直に思い入れが強い。時代とともに変化していく人々を丁寧に伝えてくれていた。他登場人物とは異なる人物像のリリー・フランキーも良かったが、木村多江が素晴らしい。ハッシュ!の時にはイマイチ好きになれなかったラストの処理も絶妙。自分の人生にとっても貴重な映画の1つとなりそう。自分が翔子と同じ疾患にかかった経験が有り、自分を鏡で見ているような錯覚に陥ったことも大きい。

実録連合赤軍 あさま山荘への道程

監督若松孝二 主演ARATA
「実録」なため答えや打開策は出さないが、観ている人それぞれの「意識」を促す作品。観た後の「議論」を促す作品。僕を含め、この時代以降の日本人達へ向けられた作品。そういう意味では山田洋次監督作「母べえ」もそうかな。映画監督・作家の森達也氏も同じようなコメントを書いていることに気付いたけど、正しいとか、悪いとか、そんな一言で片付けられちゃうような感覚の作品ではない。
時代は繰り返す。その時僕はどうしようか。そうさせる映画。日本人として観て良かった。遠山美枝子と重信房子の「別れ」から山岳ベース事件に至りラストに至るまでがとにかく凄い。長時間作品というのを感じさせない。観賞後の絶望感が「ミスト」級だったけど、誰かに「今年のお勧め日本映画」と問われたらこれしかあるまい。

シューテム・アップ

監督マイケル・デイヴィス 主演クライヴ・オーウェン
映画の存在すら知らず、たまたま見かけて「何だこれは」と思って観たら大当たり。今年上半期一番笑った映画。ここまでやるかと思うような溢れるアイディアが観ていて楽しくスピード感も抜群。カレーライスの福神漬レベルのメッセージ性もいい。客層がほとんど男性で、同じ列の別々の2人の男性が何故かそれぞれ漫画読んで待っていた。観賞後喫茶店でキャロットジュースを頼んで一人で笑った。変な奴だと思われたに違いない。

ゼア・ウィル・ビー・ブラッド

監督ポール・トーマス・アンダーソン 主演ダニエル・デイ・ルイス
観た時も長さを感じさせないで見応えあって満足だと感じたが、石油を巡ったやや細かい人間関係を別にして主人公だけに眼を向けるを思うところが多く、今でも強く余韻を残す。大スクリーンで観る当たり前の感動を再び感じた。ラストの一言は忘れられない。

潜水服は蝶の夢を見る

監督ジュリアン・シュナーベル 主演マチュー・アマルリック
良く言う御涙頂戴的な過剰な表現が排されているので一層、観賞後さまざまな思いを抱く事ができた。映画全体を通してトータルで素晴らしい作品だった。幻想的な映像も、違和感無く絶妙の表現。観た事が価値となり宝となりそうな映画だった。

ミスト

監督フランク・ダラボン 主演トーマス・ジェーン
「驚愕のラスト15分」も口がポカンと開いてしまったくらい強烈だったけど、個人的にはサイレンが鳴ってラスト15分に入るところまでが特に凄かった。これでもかというほど不幸・不運の連続。しばらく再見する気にはなれない。1つのことに狂信的で周囲を混乱させるマーシャ・ゲイ・ハーデンの演技は、スクリーンから唾が飛んでくるかと思った。

ミラクル7号

監督チャウ・シンチー 主演シュー・チャオ
上半期最も幸福感を味わえた作品。まだ観てない人がこのブログを見るかもしれないので気をつけて書くが、UFOウォッチャー登場シーンと父親がゴミ捨て場でテレビを拾うどうでもいいようなシーンが重要で、それに加えてナナちゃんの意味を解釈すると、ラストはチャウ・シンチーの優しさが伺えて本当に素晴らしい。ギャグも減ったものの相変わらず最高で、音楽の使い方も楽しい。心が躍る。

最優秀作品賞
選ぶのが難しいため国内・海外に分ける。
潜水服は蝶の夢を見る
ぐるりのこと。

最優秀監督賞
橋口亮輔
フランク・ダラボン

最優秀主演男優賞
ヴィゴ・モーテンセンイースタン・プロミス】かダニエル・デイ・ルイスゼア・ウィル・ビー・ブラッド】でまだ決着付けられず。
小林薫【休暇】

最優秀主演女優賞
タン・ウェイラスト、コーション
木村多江【ぐるりのこと。】か小池栄子【接吻】でまだ決着付けられず。

最優秀助演男優賞
ハビエル・バルデムノーカントリー
豊川悦司【接吻】

最優秀助演女優賞
マーシャ・ゲイ・ハーデン【ミスト】
樹木希林【歩いても 歩いても】

思いのほか長くなってしまって時間もかかったけど、書いてて楽しかった。気が向いたら年末も書こう。