もう半年近く見てないけど、おそらく外れてないだろうから書いとく。

以下は、id:D16:20041016を読んだ感想です。

個人的にはあの時間帯に戦闘をやらせるのがそもそも間違いだと思ってるけど、それを言うと番組全否定になるので、戦うヒロインの形式を守りつつどう細工するかという話にするよう努力する。

変身した姿でしか話せない相手の不在

プリキュアのドラマ展開が苦しいのは、変身後の姿だけの人間関係がないため。
魔女っ子メグや魔法使いサリー等は出自が魔法使いの社会もしくは人間以外の異種族であり、魔法を使うのは彼らの生まれ育った環境に準じた行動だ。変身ヒロインという言い方をするなら、変身後こそが彼女達の本来の姿。
次にクリーミィマミやマジカルエミ。変身後の姿で周囲の身近な人間達と触れあい、新たな人間関係を構築していく。恋愛関係も当然これに含まれる。
人間関係、要するに観念的なお題目ではなく、変身前、変身後それぞれに、具体的な話相手が画面上に居るか、目に見える形で魔法という異社会習俗が提供されているか、という話。変身後に敵としか会わないのでは、変身=義務=嫌なことと見えてしまうのは仕方ない。正義の味方としての義務感が比較的強いかに見えるセーラームーンにしたところで、変身すればタキシード仮面と逢えるという余禄があった。
ピッチの場合、るちあは言うまでもなく異種族だし、海斗との関係でも「人間に告白したら泡になってしまう」という条件下でマーメイドの姿と人間の姿とでそれぞれに逢瀬を重ねていく。海斗とのジレンマが解消されたピュアでは、あの冒頭30秒「海斗、きっと思い出してくれるよね…星羅、かならず助けてあげるからね」が象徴的。星羅はきちんと顔を見せていく。また、波音とリナの恋愛模様を最後まできっちり追いかけることでピッチで先送りにされたテーマから逃げなかったという言い方もできる。…正確な言い方じゃないけど(ピッチは語るのが難しい)

プリキュアはどうか。ほのかとなぎさはプリキュアとして出会う前からクラスメートの顔見知り。プリキュアとして行動を共にするようになってからは変身前のプライベートでもベッタリとくっついている。この二人はお互い以外の変身後の人間関係が人間世界において存在しない。恥ずかしい格好で戦って傷ついてもイケメンと知り合えるわけでもない。そんなもん、過剰な責任感や義務感(電波じみた思い込み)なくしてやってられるか。言うまでもないと思うが、戦闘シーンの運動描写のカッコよさ美しさは視聴者の価値観であって作品内の動機とはなりえない。

では変身後の人間関係を構築すればいいのかというと、ここでコスプレヒロインであることが致命的問題となる。つまり変身が服の着替えだけで、変身前の知り合いが顔を見たら同一人物だとバレてしまうという設定のヒロインは、変身後の姿で顔見知りと新たな人間関係を構築するというマジカルエミの手法は使えない。また、二人がラブラブ百合カップルでなければならないという縛りにより、二人の側に「変身すればあの人に逢える」という動機を組み込む手もタブーとなる。二人を追いかける新聞記者などを配置しようにも、現実世界ではザケンナーによる被害は発生していない。片っ端から建物も直る。二人の戦いが半ば非現実であることが、変身後に現実の人間関係を発生させることを不可能にする。

オジャ魔女路線で行く

ではどうするか。ここはやはり「オジャ魔女どれみ」を参考にすべきだろう。「オジャ魔女どれみ」は変身をドラマ展開の要素に組み入れなかったが、どれみ達にとって魔女に変身し魔法を使うのは楽しいことであって世界の危機などとはリンクしない。

「どっきりどっきりDON DON!! 不思議なチカラがわいたら どーしよ?(どーする?)
びっくりびっくりBIN BIN!! 何だかとってもすてきね いーでしょ!(いーよね!)

きっと毎日が日曜日 学校の中に遊園地
やな宿題はぜーんぶゴミ箱にすてちゃえ」
(「オジャ魔女カーニバル!!」より)

その結果として彼女達はいつまでも魔法を使い続け、ファンタジー世界から卒業しないオタなお兄ちゃんたちのためにOVAが出続ける。この「卒業しなくたっていーじゃない」は島耕作が永遠にモテモテでカッコいいのと同じことなので別にヲタが未成熟という話にはならないよ念のため。

ということで、プリキュアが戦闘シーンを入れつつオジャ魔女を踏襲する形を考えると、暴力を肯定する形ではっちゃけるパワーパフガールズにする、というのを提案したい。敵は世間のトレンドを追いかけ社会の害悪みたいなのを背負わせて、倒す側の正義を補強する。道路公団関連企業天下り取締役ザケンナー、食肉産地銘柄偽造業者ザケンナー、皇太子妃いびり宮内庁ザケンナーなど、子供にわかりやすく問題の構造を単純化したザケンナーを登場させる。大きいお友達向けにはときどき敵の側から社会批判をほのめかせるが、主人公達はバカなので相手の事情を気にせず敵をバンバンぶったおす。

ザケンナー! 俺がニートなのは企業の雇用方針のせいだザケンナー!」(最後の捨て台詞)
プリキュアマーブルスクリュー!」(必殺技で敵消滅)
「あれ、なにか言ってたのかしら?」「よくわかんなーい」

以下は蛇足

…実はこの他に、簡単に失地回復する方法がある。モモ、セーラームーン、りりかSOS等、「現代の神話」エンド、つまり主人公自己犠牲最終回。物語としては基本パターンなので収まりがいい。この自己犠牲エンドの仕組みは、変身後の姿でいなければならない比重が次第に増していき、変身前の生活が維持できないラインをオーバーし、にも関わらず変身後の姿を受け入れてくれる社会が存在しないために存在を抹消されるというもの。強さを求めて身体を壊す、仕事を優先して家庭崩壊、などのパターンだ。
この自己犠牲エンドは「変身後の姿を受け入れてくれる世界がない」という前提条件とセットのため、プリキュアにはうってつけだ。「このままでは勝てないすごく強い敵」が家族や友人などの事情を知らない身内を狙って攻撃してくれば条件は揃う。んで自己犠牲エンド後に「あたしたち二人、いつまでも一緒だよ」とか言って安らかな顔で目を閉じとけばいい。んで転生して続編へ。オタクを含めて視聴者の大半は週刊アニメなんて2、3回分の連続性しか記憶してないので問題はない。