レイ・ブラッドベリ瞬きよりも速く早川書房,1999


ファンタジーショートショートの達人と以前紹介されていたのを見て手にとってみました。短編が21作。まあ手に取った理由もありショートショートな感じで読みました。以下掲載順に思ったことを適当に。
Uボート・ドクター」精神分析のお医者さんの話だと思うんだけれど、なんてか人の話聞いてねーなーって感じ。話が飛んでいるのでちょっと油断すると置いてけぼりにされてしまいます。
「またこのざまだ」真夜中に騒がしい音がするので出てみると……という話。なかなかきれいなお話です。あとがきを読む限り、彼らは実在の人物なのかな。
「石蹴り遊び」最初になつかしい遊びを喚起させるところが絶妙かなと思う。ブラッドベリさんの物語は森の中とか夜の暗さが良く似合う。
「フィネガン」最初は分からなくても読んでいくうちになんとなく結果はの想像はつきましたが、余韻の残る最後の段落が好印象。
「芝生で泣いている女」深夜、自分の家の庭から女の泣き声が聞こえてくることから始まる話。幻想的な夜の密会が浮き上がってきます。あとがきによると、詩があってそれを元に起したとか。
「優雅な殺人者」互いに殺意を持って生活する老夫婦の話。いやはや、結末はブラックなようでブラックでないような? それこそ、読み終わったあとは殺人者のくせに優雅な雰囲気を醸し出しやがって、と叫びたくなりました。
「瞬きよりも速く」表題作。自分そっくりな男が手品師にあしらわれるところを見る話。奇妙な始まりから世界をまとめていく展開は面白かった。
「魔女の扉」この中では比較的分かりよいオチを持つ話。んでもってブラック。
「九年目の終わりに」これもオチはわりとありそうな話なんだけれども、奇妙な始まりからそこへのもっていき方がうまい。
「レガートでもう一度」小鳥たちが歌いだす話。
「交歓」再会して過去を懐かしむ二人の話。これが一番私の好みでした。直球ストレートでグラブにおさまるんだけれど、その中で消えちゃうような(謎)
あとがきも読んでて面白いというか興味深かったです。
星新一さんのようなオチがあるショートショートではなく、奇妙な設定から流れ出す幻想的な短い話が多かったです。21篇あるとは言え、一気に読み進めるのはもったいないし辛いかもしれません。余韻に浸りたい感じだったので、すぐには新しい話の世界に入りづらいのです。
幻想的であり型にはまっていないので、ふとすると話が分からなくなってしまい一瞬も気を緩ませることができませんが、その代わりに深い味わいを持った作品になっています。


この小説が好きな人にお勧めする③
③ ショートショートの世界② ボッコちゃん① クライム・マシン
①ジャックリッチーさんの『クライム・マシン』こちらはミステリのショートショートともいうべき作品集。→感想
星新一さんの『ボッコちゃん (新潮文庫)』同じショートショートでも感じはまったく違いますね〜
高井信さんの『ショートショートの世界』ショートショートの歴史を知るためにはぜひ。→感想