信州下諏訪、万治の石仏


 夏の終わりの一日、下諏訪の万治の石仏を訪ねた。その石仏は諏訪大社下社春宮の森に隣接して流れる砥川脇の田や畑の中にある。

 高さ2.7メートル、長さ4メートルの自然石(輝石安山岩という)の上に、高さ60センチほどの仏の頭がちょこんと載っている。何か稚拙な感じもするが、それがかえって活き活きとして、一度見たら忘れることのできないほど強烈な印象を受ける。不思議、独特の雰囲気を持った異形でユニークな石仏である。

 岡本太郎が「こんな面白いもの見たことがない」と絶賛した「万治の石仏」。異形と称されるのは、自然石の胴体に別の石で彫られた仏頭が載せられていることによる。

 同じ信州に住んでいることもあり、何回となく訪ねているが、見る度に新鮮な驚きと感動、またほっとする、こころ安らかになる親しみを感じるのである。この日は平日だったが夏の観光シーズン、途切れることなく次々と人がやって来る。たまたまいた女性の二人連れに聞いたら、奈良から来たという。

 なお、この石仏の由来、現地にある下諏訪町の案内板によれば...

 万治の石仏と伝説
 南無阿弥陀仏万治三年(16600)十一月一日
 願主・明誉浄光 心誉廣春
 伝説によると、諏訪大社下社(春宮)に石の大鳥居を造る時、この石を材料にしようとノミを入れたところ傷口から血が流れ出したので、石工達は恐れをなし仕事をやめた(ノミの跡は現在でも残っている)。
 その夜石工の夢枕に上原山(茅野市)に良い石材があると告げられ、果たしてそこに良材を見つけることができ鳥居は完成したというのである。石工達は、この石に阿弥陀如来をまつって記念とした。尚この地籍はこの石仏にちなんで古くから下諏訪町字石仏となっている。
 下諏訪町