旧正月とおらんだ正月

 中国の春節旧正月)にまつわるニュースが伝わってきます。ことしの
旧正月は1月26日であります。旧暦で正月を祝うのは、東アジアでは
多数派であるようで、現代日本では話題にもなりません。もちろん、この
ようになったのは、日本社会が西欧化して以来のことで、たかだか150年
ほどのことでしかありません。
 旧正月というのは、新暦でいうと2月中旬であることが多いのでありますが、
ことしは去年よりもひと月も早いというのは、新暦しか暦を知らないからで
ありましょうか。
 例年、楽しみにしている読書アンケートを特集する「みすず」は、1月号が
1月末から2月上旬に刊行となります。この時期に手にしたときに、正月気分は
しないのでありますが、旧暦でしたら、ちょうど正月にあわせてでたような
感じになります。
本の雑誌」1月号はベスト10特集でありますが、これを見るのは、正月を
過ぎて、この時期のほうが気持ちも落ち着いてよろしいようです。とりあえず、
このベストを見ていたり、総勢31名からなる「私のベスト3」も、いまの
ほうがゆっくり読める。
 今の日本でも旧正月でお祝いしたりする地域とか、団体があると思うのであり
ますが、江戸時代には、逆に新暦をとりいれて正月行事をしたりすることが
あったということを読んだことがあったぞと、次の本を探してきました。

新編・おらんだ正月 (岩波文庫)

新編・おらんだ正月 (岩波文庫)

小生が、本日に手にしているのは「富山房百科文庫」版です。( 岩波文庫版は
購入しているのか不明です。)
 この版本の巻頭には「おらんだ正月を祝う人々」のありさまを描いた絵が
掲載されており、それに引き続きで富士川英郎さんの解説があります。
富士川さんは、森銑三さんの「蘭学を拡めた大功労者 大槻磐水」の最後の
ところを引用しています。
「 寛政6年のことですが、その年の閏十一月十一日は太陽暦では1794年
1月1日に当たるというので、その日磐水は友人の蘭学者たちを大勢家に招いて、
陽暦の新年を祝って、その図を画家に描かせました。それからは、毎年そのことを
続け、新しい元日に人々が寄り合うので、それを新元会と名付けましたが、それを
また砕いてオランダ正月などとも呼びました。」
 この「おらんだ正月」という本は、この行事について解説しているものでは
なくて、ここに集った人々の伝記を紹介しているのでありました。