過ぎたるは及ばざるが如し

防衛省天皇」と呼ばれた輩がいる。山田洋行事件で引っ張られたゴルフ好きの守屋武昌氏である。ただこんな人物をワシャは便宜的にも「天皇」と呼称したくない。だから「テンノー」と言い換えたい。
 かつて財務省を牛耳っていた「勝栄二郎テンノー」もそうなのだが、組織で〇〇テンノーと呼ばれるのは事務方のトップであることが多い。守屋氏も特異なキャラクターを、当時の防衛庁長官である石破茂によって事務次官に抜擢をされて、事務方のトップに躍り出た。彼は、権力の所在を嗅ぎ分ける嗅覚と、そこにおもねる柔軟さを持っていた。守屋氏は自分の得になると思った政治家へは最大限の評価をした。実際には軽んじているんだけど、相手の喜ぶツボをみごとに押さえる。これで歴代の防衛大臣はコロッと騙される。そして下に対しては、追従をしてくる子飼いの人間をどんどん引き立て、意に沿わない人間を遠慮なく排除していった。大臣には徹底して面従腹背で通し、自分の周辺は媚びへつらう者ども、異を唱えない輩で固めた。
 結局、防衛事務次官の4年の間「防衛省のテンノー」と呼ばれたわけだ。しかし、その4年間でよどみ、腐り、守屋氏は急坂を転げるようにして防衛省を追われる。有能な人ではあったが、敵をつくり過ぎた。面従腹背が過ぎた。独裁が過ぎた。過ぎたるは及ばざるが如し。作用があれば反作用が必ずある。神童と言われるほどの頭のいい人だったのだが、そのあたりを見極められなかったのだろう。
 昨年、守屋氏は本を上梓した。
http://www.amazon.co.jp/%E6%97%A5%E6%9C%AC%E9%98%B2%E8%A1%9B%E7%A7%98%E9%8C%B2-%E5%AE%88%E5%B1%8B-%E6%AD%A6%E6%98%8C/dp/4103266325
 こんな本を出している場合ではなくて、『私はどうして防衛省を辞めたか』という暴露本のほうが売れると思いますぞ。