恩田陸 黒と茶の幻想

恩田陸3冊目。これはメフィストで連載されていた。本の装丁は北見隆でデザインは京極夏彦。・・・装丁ってデザインもかねてるんじゃないのか?つーか京極は何のデザインをしたんだろう・・・。
どうでもいいけど装丁にはBLACK&TANって書かれてます。TANって黄褐色とか日焼け色って事なので、茶だとBROWNなんじゃとか一人突っ込んだり突っ込まなかったり。
ページは619。

あらすじ

大学時代の友人4人*1が久しぶりに旅行をするはなし。目的地はY島のJ杉らしい。

感想

いやーなんか時間のかかる本でした。ネタが豊富で面白いんだけど、何故か熱くなってガンガン読むような本じゃないんで、合間合間に読んでました。
ストーリーはほとんどないに等しいですな。一応有るけど言っちゃうと面白さが当社比1/3以下になると思うので自主規制*2。ほんとにただ久方ぶりに友人達と気兼ねなくのびのびとした旅を満喫しているって言うのにつきます。まぁ、学生時代等の過去の清算って言うのもありますが、それは成り行きですし。
分類はやはりミステリーで、ミステリーってこういうのを言うんだろうなという、なんかお手本みたいにも感じたりした部分もあります。別に人が死ぬとか云う事はないんだけど、乱歩の様な蠱惑的な怪しさが薄いベールのように全編を包んでる様に感じたわけで。
4つの章で構成され、それぞれの人物視点で書き分けて話を進行させていくスタイルは人間関係ってやっぱりこんなもんだよなぁという諦めみたいなものを感じさせるリアルさを持ってますな。表層と深層の対比は相当のギャップがあったり、相違はあんまなかったり人それぞれだけど、なんか深層の方は軒並み暗いのはご愛嬌。まぁ、30超えて酸いも甘いもって気になりだしてるキャラクター達の日常生活の辛さがにじみ出て居ると思えばさもありなんですな。おまけに人間は生まれたときから装ってるって云うのを実感させてくれる個所もあったります。
あと、ネタの豊富さはかなり脅威ですな。これだけで文庫本ぐらいの内容の小説は書けるんじゃないかって言うものがボロボロ転がってて、実にもったいないお化けが出そうな展開。

正直非日常の旅とはいえ、ちょっと辛くないか屋久*3は。いや、ストーリー上辛いとかじゃなくて、旅先としてって事。レジャーで山は辛いものがありますよ・・・(単なる個人的好き嫌い)。まぁ、30超えて海って言うのも男性女性両方とも勇気が要りますな。
本作は内容がどちらかといえば少女漫画の短編連作形式みたいな感じで読めると思います。ちょっと腐女子的な観点で書いてるようにも思えたりもするけど、そこら辺は気にしなければ気にならないレベルなので、万人受けしそう。今までの本よりはいいかも80点。

参考リンク

黒と茶の幻想
黒と茶の幻想
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恩田 陸
講談社 (2001/12)ISBN:4062110970
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*1:内訳は男二人・女二人

*2:最近の自主規制っていやらしいよねぇ

*3:蛇足事項としては作中のY島はおそらく屋久島でJ杉は縄文杉の事と思われる。Y杉は当然屋久杉だと思う。