週末の記録



母が訪ねてきたので軽く都内めぐり。写真はスカイツリーの前の私…ってどこだか分からないけど(笑)撮ってもらった記念に(母は脚が悪くしゃがめないので、仰角で撮れない)。学生時代、ツリーのふもとの浅草通りを都電で親戚宅に通ってたそうで、懐かしがっていた。
来訪の主な目的は、同居人の個展を観ること。すてきに仕上がったギャラリー内で一枚。

シャンハイ



太平洋戦争開戦前夜の上海を舞台にした、アメリカ・中国・日本合作もの。主役の米国諜報部員にジョン・キューザック、その親友の愛人に菊地凛子、中国人裏社会の実力者にチョウ・ユンファ、その妻にコン・リー、彼らの周囲をうろつく日本人将校に渡辺謙


予告編から想像はしてたけど、よくも悪くも、ちょっとした小品という感じ。ジョンキューのナレーションと暗い画面に「真夜中のサバナ」を思い出してた。もっともああいう「何か」はない。ジョンキューの、当時とそう変わらない顔の下にはひどく膨張した体があるけど、親友の死に立ち尽くす場面では昔の彼のようだった。ちなみに同居人は、他にこの役をやるならキアヌかな〜と言っていた(笑)飄々と運よく生き延びる感じは、確かに合ってなくもない。


「ただ親友のために」諜報部員となったアメリカ人ポールと、「大勢が犬死にしてるのに、一つの命なんて」とレジスタンスに身を投じる中国人アンナの人生が「魔都」で交錯する。そして開戦。
渡辺謙の役は「最後に勝つのはいつだって女さ/忘れられるからな/男は騙されてると思っていてもダメ/それが原動力なんだ」などと言ってのける、ちょっとむかつく「ロマンチスト」。とはいえ女に「魅せられ」「翻弄され」る男、という構図ではなく、ジョンキュー演じる主人公も女をちゃんと惹きつけてるのが、観ていて気持ちいい。
ガンアクションについては、最近「復讐捜査線」「この愛のために撃て」のような上等のものを観ていることもあり、どうにものっぺり感じられた。こっち向いて撃ってくるだけ。ただユンファが活躍する場面は面白い。


コン・リー演じる金持ちの妻は、着てみたいと思わされる衣装ばかり身に纏うけど、菊池凛子は、まあそういう役柄なんだけど、寝巻きガウン姿だったり布で覆われたりとぼろぼろ極まりなかった。

ハッピー・ゴー・ラッキー



マイク・リーの2008年作を、三大映画祭にて観賞。ロンドンを舞台に、サリー・ホーキンス演じる主人公ポピーの「happy-go-lucky」な日常を描く。


冒頭、自転車で町をぶらつくポピー。カメラと彼女の間を通り過ぎるトラックの荷台や歩道の柱などが、「普通」の映画と違うというか、「映画の意図」に従ってないというか、そもそもそうした「意図」が無いように思われて、もっと彼女を「ちゃんと」見せてよ、ともどかしい反面、大げさだけど、映画の中に一緒に生きてるような感覚を覚える。
書店で店員の男性に「すてきな帽子ね」などと話しかけるも相手は無視。しかし彼女が「不愉快?」と問うと「いいや」と答える。自転車を盗まれバスに乗り、大きく揺れると隣の中年男性に話しかける。彼もそれなりの笑顔を返す。彼らの心情は「分からない」。これにも冒頭と同じ、映画の中に居るような感じになる。


ポピーは独身の小学教師、同業で10年来のルームメイトのゾーイとマンション住まい。仕事の後は、なんとか教室で体を動かしたり、バーで飲んだり。服装は大抵、網タイツに「履きやすい」ブーツ。サリー・ホーキンスは「デザート・フラワー」でもロンドンのtopshopの店員で、こんな感じの格好して、女同士で暮らしてた。彼女ほどそういうのが似合う女優もいまい。素晴らしい口のゆがみ具合に見惚れる。あんなウザ女を「公認」で演れるなんて、楽しいだろうな(笑)
「未来を生きる君たちへ」のくそ教師(そういうふうに描かれているわけだけど)にむかついた後なので、ポピーの、「発見」したらすぐ「対処」、プロ任せというやり方は非常にまともに見えた。まあ元の「世界」が違うともいえるけど。
「人生設計」を説かれるくだりでは、彼女が「30歳」というので驚いた。30じゃ全然アリ、すぎるだろう。


いわゆるラブシーンがやたら「リアル」で、へんな言い方だけど、まるで自分がしているみたいに感じられた。「女体」で「エロス」を表現してる映像にはない心地よさ。また、翌朝の何気ないいちゃつきや、男と知り合った後に教官の車に乗り込んだ時の、いつもと違う空気(自分のせいでも、相手のせいでもある)などの感じがよく出てた。


ラストシーン、ポピーとゾーイが公園の池でボートを漕いでいる。オールを一つずつ持って。
「タバコをやめようかな」と言われたポピーが「私は何をやめようかな?」と返すと、ゾーイいわく「『いい人』をやめれば?」。え、ポピーってたんに好きで「能天気」なわけじゃないんだ、と初めて知りびっくりした。そういう驚きを味わうのも、一つの映画の見方か。もっともゾーイがどういう意味で「いい人」と言ったのかは分からない。どうにも解釈できるところが面白い。
ちなみにゾーイはほんとに「ゴージャス」で、私こそパートナーになりたいと思わせられた。