少年漫画家志望のみなさん

少年漫画家志望のみなさん
登場人物の名前ってどうしてますか?
たとえば、今までに、数字をいれた名前って作ったことありますか?三郎とか、太一とか、そういう名前です。
最近の子供たちは数字が入ってる子は少ないから、あなたもそういう名前はつけませんか?
実はおととい、いつものように、見た夢を丁寧に思い出していたら、まあ何でもない夢なんですが、なぜか「2」がいくつか出てきたんですよ。お化けが出てきてその背中に2のゼッケンがあった、とかいう印象的なものじゃなくて、二階に女が寝ているとか、二階の中華で飯を食うとか、二度映画を見るとか、そういう類です。普通なら思い出しても意識が行かないような奴です。でもだからこそ意味があるんでしょうね。一つの夢の中にそんだけ出てきたんで。そしたら数字が怖くなった。
こういうことです。2そのものが怖いというんじゃなくて、抽象の怖さです。私の無意識は2を使って何かを伝えようとしている。あるいはなにかを整理しようとしている。
動物には数字がありません。だけど人間には数字がある。その怖さです。たとえば誕生日。誕生日は一神教の産物なのかもしれませんが、その数字に縛られる。普通は良い意味で考えますが、裏を返せば実はとてもグロテスクですよね。
ホラーや怪談を考えてもそれがよくわかりますね。『13日の金曜日』は13日に特別な意味があるから怖いわけじゃないはずです。その逆で、意味がないのに意味を見出してしまうそのシステムが怖いんですね。
『百物語』にしても、そうです。なぜ百番目の話をしてはいけなのか?これも考えればまったく意味がないはずです。だって二進法だったらどうなのよ?ってことでしょ。
小泉八雲だってそうだ。「八」が入ってるから彼の怪談は怖いんです。そして数字が怖いことを知ってるから、ハーンは日本名を八雲にしたんでしょう。
あ、勘違いされると困るんで念押しで言っておきますが、オカルト的な意味で言ってるんじゃないんですよ。数字に神秘があるとかじゃ全然ないです。その逆です。よくぞこんな恐ろしい抽象化のシステムで人間は生きてるんだなってことです。数字じゃわかりにくいですか?だったら赤とか青とか色でもいいですよ。色も怖いでしょ。我々は本当の赤を見ることが出来ず、抽象化された赤しか見ることが出来ず、そしてその概念の赤のほうが、私より先に存在する。そういうことです。「××ちゃんはナニ色が好き?」良く考えて下さい。この質問の恐ろしさを。
戻りますね。登場人物の名前の話です。
読者って実は読んでるときは登場人物の名前を意識しません。漫画はまだ字を直接見られるし、前のページにかえることができるから、映画やテレビドラマよりはましだけど、音声だけだと、会話の中に出てくる名前はよほど特殊な名前でない限り、スッと流れてしまいます。
だから名前は実は読者にはある意味どうでもいいんですね。
ところが作る側にはすごい意味がある。
たとえばこんな経験はないですか?名前を決めたけどなんかしっくりいかないので、途中で変えること。私なんてしょっちゅうですよ。つまりそれって書きたい人間と名前がずれているってことですよね。でもなぜそう思ってしまうんでしょうね?だって何でもいいはずでしょう?
少年漫画はダジャレ的な名前が多いのは間違いありません。一徹な人だから一徹だとか、カッコいいから花形だとか、兄弟たくさん豊作とか。
現実のつけ方も実はそうですね。親の願いが込められてる時点である意味ダジャレでしょ。あるいは長男だから「一」をどこかにつけるとか。つまり名前はもともとそういうものなわけでしょう。
って、ここまで書けばわかりますね。勘のいい人は八雲を持ちだした時点でわかったかな。
そうです。名前こそがまさにもっとも恐ろしい抽象なわけですよ。私という抽象化出来ないものを平気な顔で確定するわけですから。それも生まれて二週間で決めないといけないんですよ!まさに14という数字が襲って来るなかでで、これから80年生きるだろう人間に、一文字とかふた文字とかせいぜい3文字の名前をつけるわけです。
名前はチョー恐ろしい。数字はマジ恐ろしい。それなのに数字をいれた名前はもうとびきり恐ろしい。北島三郎。北の島の三の男。3?3って、なにが3なんだ!!!うわああああ!!!
なんてことを、夢を点検してたら思った次第です。
少年漫画家志望のみなさん。「あいかわらずこいつナニを言ってるかわからない」と思ってますか?でも真面目にいえば、私はこういう話が「もっとも効く」と思ってるんですよ。
追伸。ときどき開く、ラカン派、新宮一成の『夢分析』(岩波新書 2000)によれば、夢の中の3はファルスで4は結婚だそうです。
追追伸。岩波新書、2000という数字も恐ろしい。
追追追伸。私の夢の「2」は何の意味だろうか?

夢分析 (岩波新書)

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