RUSH: ABC 1974


RUSHの『ABC 1974』を聴きました。1974年8月26日、クリーヴランドのラジオ音源をCD化。おまけで3曲、1975年5月のクリーヴランド音源も入っています。ファースト発表後、ニール・パート参加直後のライヴです。若くてハード・ロックしています。「Fancy Dancer」とか「Garden Road」とか、珍しい曲も演っています。
演奏が良いことに加え、RUSHの場合、自分たちが管理していない形(たぶん)で音源がリリースされることは稀なので、本作は貴重です。正直出所が微妙で、いつ回収されるかも判らない盤なので、今のうち押さえておきましょう。
ブックレットにはthis rare recording is now available legitimately for the first time and with de-luxe packagingと書いてありますが、音源が本当にlegitimateなのかはともかく、普通のCDプラケースが紙製スリップケースに入っているだけで、さほどデラックスというわけでもありません。

無言歌 @試写会


ワン・ビン王兵)監督の映画『無言歌』を見ました。
1956年、毛沢東は"百花斉放百家争鳴"を提唱、共産党に対する批判を歓迎すると宣言しますが、調子こいて批判する人がたくさん出てきたせいか1年で撤回、"反右派闘争"で粛正しまくります。職場の宴会で上司が「無礼講だ」と言うから本当に言いたいことを言ったら激怒されるようなものですね。
で、この映画の舞台はゴビ砂漠の真ん中にある強制収容所(というか土に穴を開けただけ。タトゥーインの住居を汚く狭くした感じ)。農場の開墾を名目にしていますが、砂漠の真ん中なので、ほとんど無意味。劣悪な生活環境と栄養失調で死なせるために収容している感じです。食事の雑炊は穀物がまばらに入っているだけなので、ネズミを殺して食べたり、囚人仲間の吐いたゲロを食べたりします。囚人は連日ガンガン死ぬので、たまに尻やスネ肉をそぎ取って食べます。そんな描写が、過度にメロドラマチックになることなく、淡々と描かれます。空が青く地平線が丸いです。
囚人の一人・董さんの嫁さんがやって来て、そこらへんに埋められている夫の亡骸を掘り起こそうと数日を収容所で過ごします(何百人も埋まっているので、見つけ出すのが大変)。男の犯罪者だらけのところに女が一人で泊まって、普通だったらレイプと暴力の嵐を期待しますが、囚人たちは元々インテリゲンチャだし、なにぶんごはんを食べていないので、特に何も起こりません。いちおう物語の最後にオチはつくのですが、やはり淡々としていて、空が青く地平線が丸いです。
原題は『夾辺溝』、英語題は『THE DITCH』なのですが、邦題『無言歌』はそんな淡々としながら作品を貫く詩情感をタイトルにしたのだと思います。
ワン・ビン全作一挙上映を今週金曜までやっているので、前作『名前のない男』を見に行きたいです。

DEF LEPPARD @東京国際フォーラムホールA

試写会を見たその足で、DEF LEPPARDを見に行きました。完成度が高く素晴らしいライヴでした。
ジョー・エリオットに「こいつ昔DIOにいたんだぜー」と言われて、ヴィヴィアン・キャンベルが「Holy Diver」をちょっと弾きました。ちなみに前日大阪では「The Last In Line」、翌日東京2日目では「Stand Up And Shout」だったそうです。あと「WHITESNAKEにもいたんだぜー」と言われて、「Still Of The Night」をちょっと弾きました。アンコールでジョーはフィル・コリンを紹介するときに「昔GIRLってバンドにいたんだぜー」と言っていたので、「Hollywood Tease」を弾くか?と一瞬思いましたが、実現しませんでした。

BITCH MAGNET @渋谷O-NEST

そしてDEF LEPPARD終演後に渋谷に向かって、BITCH MAGNETを見ました。前座のにせんねんもんだいとふくろは見れませんでしたが、BITCH MAGNETは滑り込みセーフ。
ポスト・パンク/ノイズ・ロックのレジェンドが再結成、12月のAll Tomorrow's Parties出演を前にして1回のみの来日公演。『UMBER』『BEN HUR』どちらも良いアルバムなので、ライヴで見たくて頑張って渋谷に行きました。なお、それらのアルバムにいろんな音源を加えた3枚組ディスコグラフィCD『BITCH MAGNET』がえらく安いです。
演奏は良いものだった一方で、大音量で押しまくるタイプではなく、スーヤン・パークのヴォーカルが脱力系でした。で、とにかくギターの音の不調が命取りで、再度アンプをいじったりシールドを変えたりロスタイムが多く、かなり冷めてしまいました。結局45分ぐらいやって、ほぼギブアップのような形で終演。メインのギブソンSGが不調でしたが、サブとしてちょっと使ったヤマハが終演後に突如倒れて、ヘッドが縦にまっぷたつになってしまいました。
せっかくのレジェンド初降臨がこんな形になってしまったのは我々だけでなく、バンドや主催者側にとっても不本意なものだったでしょう。とはいえ、DEF LEPPARDの直後に見たせいか、非プロフェッショナルなところが目立ってしまい、ちょっと残念でした。でも、彼らが再結成を果たし、そして日本に来たことは素晴らしいことだと思うので、来年はぜひ本格的なジャパン・ツアーを行って、フルスケールのライヴで本領発揮して欲しいです。