コンテンツとしてのダンス

 「コンテンツとしてのダンス」と書くとどこか味気ない。私は批評活動に徹してプロデュースはしないことにしているのだが、時折、『先端的ダンス・パフォーマンス・コンテンツ創出』としてコーディネートをすることがある。
 最初に仕事をさせていただいたのはdie Praze「ダンスがみたい!」シリーズで、2005年度に冴子を2006年度には矢作聡子をそれぞれ推薦作家としてプログラムさせていただいた。小劇場=アンダーグラウンドコンテンポラリーダンス・舞踏という文脈がどうしても強い中で、彼らの公演を位置づけてみたことは私自身が興味深いことだった。「モダンダンス系」という彼女たちの表現に対するステレオタイプが強い中で、冴子は劇場主宰者側から腕を認められOM2やゴキブリコンビナートご一行と韓国にツアーしにいっている。矢作も「Alicetopia」に続く長編作品に挑戦し、普段と全く異なるオーディエンスの中で健闘し、さらなる伸びを見せた。結果としてモダン=コンテンポラリーの実力派の中堅作家の脱領域化に挑戦できたようにも思えるし、さらに小劇場でも彼らの表現が全く見劣りしないということも実証できた。
 さらに2006年度にはGoogle EarthとMapping Systemをつなげた先端パフォーマンス チーム非同時 http://www.urbantyphoon.com/watanave/themej.htm をコーディネートしてみた。下北沢という都市の再開発に対する運動という意味をこめたカンファレンスで展開をされた世界は政治的美学的運動の1つの現在形のようにも見えた。ゼロ次元まではいかないが、暑い下北沢の路上でパフォーマーたちと繰り広げたアクション、ハプニングのような「行為」は興味深い体験だった。この時の記録はGoogle Earth,Youtube,Wikiなどフリーツールを使いながらネット上に展開されている。http://unsimultaneous.blogspot.com/ この企画はNHK教育テレビでも紹介された。ここでの路上パフォーマンスはイタリアのアウトノミア運動 http://www.isis.ne.jp/mnn/senya/senya1029.html といった政治的美学的運動と比べてみると政治性はそれほど強くはない。しかしカンファレンスには自由ラジオの人なんかもいていろいろ話したものだった。エーコネグリ、そしてガタリのアウトノミア運動の頃の話を読んでいると驚かされることがある。ちなみにこのカンファレンスでは喜多尾浩代も路上パフォーマンスをしていた。



 この春は東京湾に浮かぶボートハウスでのパフォーマンスのコーディネートしてみた。http://d.hatena.ne.jp/yukihikoyoshida/20070519 既存のダンス界での評価軸やコンテクストを見据えながらさらに既存のコンテクストを再プログラムしていく、そんなことを感じている。

 もっともっといろいろ出来るはずで新しいディメンションをさらに強く大きく切り出せるはずである。コンテンツとしてのダンスに対してさらに新しい評価軸を切り出していくことが出来ればと思う。またその作業を通じて、私は既存の舞踊産業(というかわからないのだが実際に『舞踊ビジネス』という言葉を使う人は私の知人にいる。単に舞踊界といった方が良いのだろうか。)のみならず、メディア産業や建築、都市計画、など多ジャンルの人々と共同作業を通じて脱領域、もしくは領域横断的に身体表現を考える事が出来たしエスキースともいうべきこの作業を継続したい。

 ゼロ次元なんかはナチスのページェントをパロディにした飛行船を上げたりしている(おそらくリーフェンシュタールの「意思の勝利」にも登場するが、最後に飛行船がライトアップの中降りてくるシーンを意識しているのだろう。)のでもっと面白いことができないかと思ったりすることがある。

ゼロ次元 -加藤好弘と60年代

ゼロ次元 -加藤好弘と60年代

オリンピックなどの演出を含めてページェントの演出で印象的に覚えているものはあまりない。ただし90年代にあったYMOの再生コンサートの演出なんかもライブ映像クリップで映像ごしで見たのだが映像の編集力があってか印象的に覚えている。http://mickey.tv/r/Video.aspx?v=JVkhYZBTOqw&key=TECHNODON すごい懐かしい。私の周りのプログラマーとかネットワークエンジニア、アーティストは90年代この映像をよく見ていたので、作業をしながらいつもこの映像が流れていたというのもあるかもしれない。 折口信夫の門下生に写真家になった芳賀日出男 http://www.ipm.jp/ipmj/int/haga.html http://www1.nisiq.net/~haga/ という人がいるがこの人は「芸能」からの影響かお祭りの写真を多く撮り万博でもプロデュースの仕事をしている。先日、ある舞台写真家からこの人について教えてもらったのだがなかなか興味深い存在だ。流行に左右されず、お祭りから現代のパフォーマンスまで何が人を盛り上げるかということが伝わってくる写真だ。

 コンテンポラリーダンスでは『青田買いが進みすぎている』といった評価が出だしておりシーンや才能そのものが消費・消尽してきているような空気も出てきている。出来る事から新しい機軸を打ち出すことが必要だし、プリントメディアベースの言説、活動から解放をされて、さらなる新しい舞踊論を電子メディア上でインタラクティブに展開していくことが必要であるように感じる。じゅんじゅんのアンケート用紙には「この公演を知ったのは:MIXI」という調査項目があって時代を感じさせた。
 さすがに作家は創作活動をしていることから、ライターより早く電子ネットワークやコンピュータを利用した活動や創作に順応していくことが多い。特に若手作家たちのゲリラ的活動は印刷媒体ベースのダンス・ジャーナリズムをどんどんひっくり返しだしているのだから、もっとガリガリあれこれやって欲しくあり本当に楽しみにしている。代表的なシンクタンク2020年代や30年代の文化経済、ライフスタイルの予測をもう4-5年前に打ち出しだしている。2002、3年頃から舞踊界で仕事をしていてもう少し近未来をイメージすべきだということも感じていた。周りのプログラマーやデザイナー、それから経済学系の人たちは「過去にいかなることがあろうとも新しいプロダクトで勝負する」という形で生きていた。彼らと話をすると技術系や経済系は特に未来予測というのがジャンルにあるため、良く近未来の話をしたものだった。彼らからは遅れをとったとはいえ、次世代ダンス表現とダンス環境を考え創っていく時代にもうなってきている。


じゅんじゅんSCIENCE 第一弾
新作ダンス ソロ公演
サイエンス・フィクション
   Science Fiction」

媒体にてレビュー

こまばアゴラ劇場