海外で二世三世として成功した人間が
祖国でナショナリズムの活動をする人間たちに資金を提供する。
自分たちは「祖国」で暮らした経験もなく、
現在の「祖国」からは安全な異国で暮らしているにも関わらず。
この現象を「遠距離ナショナリズム」と名付けた
本書第一部第3章が圧巻だ。
ベネディクト・アンダーソン
『比較の亡霊—ナショナリズム・東南アジア・世界』を読む。
- 作者: ベネディクトアンダーソン,Benedict Anderson,糟谷啓介,イヨンスク,増田久美子,高地薫,鈴木俊弘
- 出版社/メーカー: 作品社
- 発売日: 2005/11/01
- メディア: 単行本
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著者はナショナリズムを解読した『想像の共同体』で一世を風靡し、
日本でも多くの読者を獲得してきた学者だ。
その地に暮らし、フィールドワークを続けたインドネシア、
フィリピン、タイでの研究が著者の思考の骨格となってきた。
(もっとも時のスハルト政権に睨まれ、
インドネシアからは追放、入国禁止になった)。
本書を読んでいるとASEANがなぜEUにならないか、
分かるように思える。
東南アジアと呼ばれる領域にはお互いが連帯するだけの
絆も利害関係も希薄なのだ。
第二次世界大戦後にこの領域の支配をもくろんだアメリカ帝国が
この地を研究する学者を間接的に支援することになった。
資金が潤沢な分野には学者も群がるのだ。
(ベネディクト・アンダーソン。Wikipediaより引用)
その中でアンダーソンが異彩を放つのは、
どこかこの地に取り憑かれた気配がするからだ。
打算だけでなく執着を伴わなければ開拓できない研究領域が
アンダーソンにはきっとあるのだろう。
事実、本書には本文と同じくらいの量の注釈が
小さな活字でビッシリ付けられている。
- 作者: アーネストゲルナー,加藤節,Ernest Gellner
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2000/12/22
- メディア: 単行本
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本書は同志社講座・佐藤優講師
「ナショナリズムと国家2」の教科書の一冊。
アーネスト・ゲルナーとベネディクト・アンダーソンの相互批判、
トランス・クリティークを通じて
ナショナリズムと国家の解読に5ヶ月間クラス全員で挑んだ。
古書価格が理不尽なまでに高騰しているので
図書館で借りて読むことを薦める。
The Spectre of Comparisons: Nationalism, Southeast Asia, and the World
- 作者: Benedict Anderson
- 出版社/メーカー: Verso Books
- 発売日: 1998/09
- メディア: ペーパーバック
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(英語原書ペーパーバックなら4,000円程度で入手可能。
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wikipedia: ベネディクト・アンダーソン
wikipedia:en: Benedict Anderson
(文中敬称略)