異状死

大野病院医療ミス:医師逮捕 「異常死」統一見解なし 緊急に県立病院長会議 /福島
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20060221-00000104-mailo-l07

 今回、24時間以内に警察に届けなかった点が医師法違反に問われたが、この点について大野病院の作山洋三院長は「例えば、法医学会と外科医学会でいう『異常死』の定義は違う。事故当時、(病院のマニュアルで届け出が必要な)医療過誤とは考えなかった」と釈明した。

ちなみにこれは、「異状死」の間違いですね。僕らは、「死」というものは、どんな手術でも頻度こそ違うものの起こりうる合併症だと思っていますし、このケースを異状死と考える医者は少ないのではないかと思います。ちなみに、今回の逮捕の理由のひとつにもなっている医師法21条には「医師は,死体又は妊娠4カ月以上の死産児を検案して異状があると認めたときは、24時間以内に所轄警察署に届け出なければならない」と規定されているのみです。

 作山院長は「地域医療を守るには人的な対策が必要。大量出血のある産婦人科の手術のある時は、いつもひやひやしている」と述べた。会津総合病院の阿部幹副院長は「なぜ逮捕なのか。警察から聞きたい。外科医が『どこまでやったら良いか』と悩み始めている」と話した。

「なぜ逮捕なのか」本当に。
異状死ガイドライン(法医学会)
http://web.sapmed.ac.jp/JSLM/guideline.html

【1】外因による死亡(診療の有無,診療の期間を問わない)
(1)不慮の事故
A.交通事故
運転者,同乗者,歩行者を問わず,交通機関(自動車のみならず自転車,鉄道,船舶などあらゆる種類のものを含む)による事故に起因した死亡.
自過失,単独事故など,事故の態様を問わない.
B.転倒,転落
同一平面上での転倒,階段・ステップ・建物からの転落などに起因した死亡.
C.溺水
海洋,河川,湖沼,池,プール,浴槽,水たまりなど,溺水の場所は問わない.
D.火災・火焔などによる障害
火災による死亡(火傷・一酸化炭素中毒・気道熱傷あるいはこれらの競合など,死亡が火災に起因したものすべて),火陥・高熱物質との接触による火傷・熱傷などによる死亡.
E.窒息
頸部や胸部の圧迫,気道閉塞,気道内異物,酸素の欠乏などによる窒息死.
F.中毒
毒物,薬物などの服用,注射,接触などに起因した死亡.
G.異常環境
異常な温度環境への曝露(熱射病,凍死).日射病,潜函病など.
H.感電・落雷
作業中の感電死,漏電による感電死,落雷による死亡など.
I.その他の災害
上記に分類されない不慮の事故によるすべての外因死.
(2)自殺
死亡者自身の意志と行為にもとづく死亡.
縊頸、高所からの飛降,電車への飛込,刃器・鈍器による自傷,入水,服毒など.
自殺の手段方法を問わない.
(3)他殺 
加害者に殺意があったか否かにかかわらず,他人によって加えられた傷害に起因する死亡すべてを含む.
絞・扼頸、鼻口部の閉塞,刃器・鈍器による傷害,放火による焼死,毒殺など.
加害の手段方法を問わない.
(4)不慮の事故,自殺,他殺のいずれであるか死亡に至った原因が不詳の外因死
手段方法を問わない.
【2】外因による傷害の続発症、あるいは後遺障害による死亡
例)頭部外傷や眠剤中毒などに続発した気管支肺炎
  バラコート中毒に続発した間質性肺炎・肺線維症 
  外傷,中毒、熱傷に続発した敗血症・急性腎不全・多臓器不全
  破傷風
  骨折に伴う脂肪塞栓症   など
【3】上記【1】または【2】の疑いがあるもの
外因と死亡との間に少しでも因果関係の疑いのあるもの.
外因と死亡との因果関係が明らかでないもの.
【4】診療行為に関連した予期しない死亡、およびその疑いがあるもの
注射・麻酔・手術・検査・分娩などあらゆる診療行為中,または診療行為の比較的直後における予期しない死亡.
診療行為自体が関与している可能性のある死亡.
診療行為中または比較的直後の急死で,死因が不明の場合.
診療行為の過誤や過失の有無を問わない.
【5】死因が明らかでない死亡
(1)死体として発見された場合.
(2)一見健康に生活していたひとの予期しない急死.
(3)初診患者が,受診後ごく短時間で死因となる傷病が診断できないまま死亡した場合.
(4)医療機関への受診歴があっても,その疾病により死亡したとは診断できない
場合(最終診療後24時間以内の死亡であっても、診断されている疾病により死亡したとは診断できない場合).
(5)その他、死因が不明な場合.
病死か外因死か不明の場合.

診療に関連した「異状死」について(外科学会など外科系13学会)
http://www2.convention.co.jp/jss2001/downloads/Daily_Bulletin_1.pdf
http://www.jaam.jp/html/info/info-20010410.htm

 「このような外科手術の本質を考慮すれば、説明が十分になされた上で同意を得て行われた外科手術の結果として、予期された合併症に伴う患者死亡が発生した場合でも、これが刑事事件としての違法性を疑われるような事件となるとは到底考えることができない。」「したがって、このような外科手術の結果として発生した患者死亡は、医師法第21条により担当医師に所轄警察署への届出義務の生じる異状死であると考えることはできない。」

 「われわれは、現実に医療現場で患者 に接して診療する臨床医の立場から、診療行為に関連した「異状死」とは、あくまでも診療行為の合併症としては合理的な説明ができない「予期しない死亡、およびその疑いがあるもの」をいうのであり、診療行為の合併症として予期される死亡は「異状死」には含まれないことを、ここに確認する。特に、外科手術において予期される合併症に伴う患者死亡は、不可避の危険性について患者の同意を得て、患者の救命・治療のために手術を行う外科医本来の正当な業務の結果として生じるものであり、このような患者死亡が「異状死」に該当しないことは明らかである。われわれは、このことを強く主張するとともに、国民の理解を望むものである。」