立川談志さんが、こんなふうにおしゃったことがある。 ――埼玉県熊谷(くまがや)って云うでしょう。あれ、クマガイじゃないのかね。 たしかに上品上生(じょうぼんじょうしょう)の往生を祈願したのはクマガイ直実だし、その史実から名付けられたラン科の山草はクマガイ草に違いない。拙宅のご近所さんで、生前のお住まいの跡地が今は記念美術館となっている近代洋画の巨匠のお名は、クマガイ守一画伯である。なぜ、こんなことが起きるのか。 まだ少しは世間的関心があったころだが、「週刊ポスト」のセンターページに「弐十手物語」という長期連載劇画があった。タイトルページにはご丁寧にニジッテモノガタリと、ルビが振ってあった。 あ…