呪ひの塔:横溝正史 1932年(昭7)新潮社、新作探偵小説全集第10巻所収。 軽井沢に設定された空間迷路の観光施設「バベルの塔」が舞台。雑誌社の社員由比耕作は人気ミステリー作家の大江黒潮から別荘に招かれる。そこに出入りする人々にはそれぞれ入り組んだ愛憎模様がある。余興に探偵劇を企画するが、被害者役の作家黒潮が塔の天辺で本当に殺されてしまう。軽井沢の濃霧が捜査を阻むうちに第2の犯行が・・・ 書き下ろしの長篇だったらしく、最初の予告では「呪いの家」というタイトルになっていた。探偵役の白井三郎は中盤まで存在感が稀薄だが、終盤には奇妙な生活ぶりや目覚ましい行動力の発揮などが描かれ、興味が深まる。全体的…