天性の狩人と呼ぶに足る。 猪の下顎、つるりと綺麗に白骨化したその部位を、所蔵すること二百以上、特に形の優れたやつは座敷の欄間にずらりと架けて雰囲気作りのインテリアにする、そういう家に生まれ育った影響か。 久連子村の平盛さんは、ほとんど物心つくと同時に「狩り」に異様な魅力を感じ、黒光りする猟銃に憧憬(あこがれ)を募らせた人だった。 (Wikipediaより、猪の骨格) 久連子村。 くれこむらと読む。 独特な風韻を帯びた名だ。こういう響きは、平地よりも山里にこそよく似合う。果たせるかな、久連子村の所在地は秘境と呼ぶに相応しい。九州中央山地の西部、人煙稀なる山また山の奥深く、平家の落ち武者伝説を発祥…