森(新潮文庫) 作者:野上 弥生子 新潮社 Amazon 『森』野上弥生子著を読む。 齢を重ねると、作家は枯淡の境地に達して書くものも、文体も変わるという印象がある。野上弥生子は、変わらなかった。『森』は、未完の遺作だが、読み飛ばすことができない知的で濃密な文体。しかし、巧みなストーリー。ふと、全体小説という言葉が浮かんだ。 女学生・菊地加根が九州から上京し、「日本女学院」に入学するところから始まる。さまざまな少女たちとの出会い。彼女には見るものすべてが新鮮で刺激的。菊地加根は著者のモデル。 「日本女学院」のモデルになった「明治女学校」は、自由と個性を重んじるミッションスクール。大半の生徒は寄…