母が詩吟をやっていた影響なのか、漢文が好きだった。高校で杜甫の「春望」を習ったときは、母が吟じてくれたりした。母は私の漢文の参考書を見て、絶句や律詩の説明がとても勉強になると、私よりも一生懸命読んでいた。詩吟の生徒を持つようになり、吟じ方だけでなく漢詩の背景知識も説明する必要もあったのだろう。 そんな漢文フアンの私は大学に入り、教養の授業で漢文を取った。それは「史記」のある部分(忘れた!)を白文で読んでいく授業だった。大講義室の正面、一段高くなったところで老境に入ったと見える先生が大きい声で解説してくれた。その先生の名前をそれまで聞いたことなかったが、あるときどんな漢和辞典がいいか、ということ…