走り茶と届く旅信も走り書き 山下喜子 (p.10) 「走り茶」、「走り書き」と明らかなことば遊び、その軽みがよい。 山羊の酥を伝ふ木簡緑さす 同上 山羊の乳製品という生命に関わることを書いた木簡にこれまた新生の息吹を感じさせる新緑が共鳴・協奏している。 ギヤマンや辛子豆腐は冷え切って 同上 「ギヤマン」という語感の強いことばを用いて冷え切った辛子豆腐という刺激の強い食べ物を入れたガラスの器を表現している。このギヤマンは赤い色付きガラスかもしれない。切れ字は、その赤が唐辛子の赤よりも強烈だったということだろうか? 鉾町を牛耳る老いの夏羽織 同上 「牛耳る」ということばには、あり得る抵抗を押さえつ…