🌼【源氏物語679 第21帖 乙女34】夕霧の若君には、「‥貴公子でおありになっても、最初の殿様が 浅葱《あさぎ》の袍《ほう》の六位の方とは」と姫君の乳母の言う声も聞こえるのであった。 〜「伯父《おじ》様の態度が恨めしいから、 恋しくても 私はあなたを忘れてしまおうと思うけれど、 逢わないでいてはどんなに苦しいだろうと 今から心配でならない。 なぜ逢えば逢うことのできたころに 私はたびたび来なかったろう」 と言う男の様子には、 若々しくてそして心を打つものがある。 「私も苦しいでしょう、きっと」 「恋しいだろうとお思いになる」 と男が言うと、雲井の雁が幼いふうにうなずく。 座敷には灯《ひ》がと…