食べ物 11 甘い おせち料理が苦手だった。今でも苦手だから過去形で書くべきではないのだが、母が時間をかけて作ったおせち料理を喜んだのは父だけで、子供たちはあまり好きではなかった。そもそも子供が好きな料理じゃないと言ってしまえばそれまでなのだが、苦手な理由は少年時代から気がついていた。 ひとつは、冷めた料理が好きじゃないということだ。のちに、中国人は熱い料理を好むと聞いて、同じだなと思った。豪華なおせち料理料理よりも、簡単な炒め物やスープの方がありがたいと思った。だから、正月でも私が料理した。母は、「これだけは好きだから」と田作りを作ったが、歯を悪くして田作りを食べる楽しみもなくなった。私にや…