第一章 出会い ~新しい世界への一歩~ 初夏の柔らかな日差しが差し込む出版社のオフィス。営業部員の馬締光也は、今日も黙々と仕事に励んでいた。28歳の馬締は、少し痩せ気味で、どこか控えめな印象を与える青年である。しかし、その内に秘めた言葉に対する鋭いセンスは、誰にも負けないものだった。 「馬締くん、ちょっといいかな?」 そんな馬締の才能に目を付けたのが、定年間近のベテラン編集者・西岡だった。西岡は白髪交じりの髪を短く刈り込み、鋭い眼光が印象的な男だ。 「あ、西岡さん。どうしたんですか?」 「実はね、君に辞書編集部へ来てもらいたいんだ。君の言葉に対する独特のセンスを、辞書作りに生かしてほしい」 突…