お互人間に取って、最も厭な恐ろしいものは、何でもあると云へば、それは云う迄もなく死ぬことであります。そして又此の死ぬと云う事は、人間は必ず最後に出合はねばならぬものであります。然るに多くの人は、其の死と云う事については、別段深く考えないのであります。そして一日々々と日を送っているのであります。 所が其の死と云うものは、人間が普思うている程、遠い所にあるのではありません。ほんの手近な生きる隣に居るのであります。故に人間が思わぬ時に、ふとやっと来て人々を驚かすのであります。 それで人間は何とかして、死の近づかん様にと防いで、それに対し色々の準備もするのでありますが、死は却って逃げる者を意地悪く、追…