源氏の手紙に衝動を受けた御息所は、 あとへあとへと書き続《つ》いで、 白い支那《しな》の紙 四、五枚を巻き続けてあった。 書風も美しかった。 愛していた人であったが、その人の過失的な行為を、 同情の欠けた心で見て恨んだりしたことから、 御息所も恋をなげうって 遠い国へ行ってしまったのであると思うと、 源氏は今も心苦しくて、 済まない目にあわせた人として御息所を思っているのである。 そんな所へ情のある手紙が来たのであったから、 使いまでも恋人のゆかりの親しい者に思われて、 二、三日滞留させて伊勢の話を侍臣たちに問わせたりした。 若やかな気持ちのよい侍であった。 閑居のことであるから、 そんな人も…