🌺源氏の返事は赤い花の歌【源氏物語96 第六帖 末摘花16】 「くれなゐの ひとはな衣《ごろも》 うすくとも ひたすら朽たす 名をし立てずば」 その我慢も人生の勤めでございますよ」 理解があるらしくこんなことを言っている命婦も たいした女ではないが、 せめてこれだけの才分でもあの人にあればよかったと 源氏は残念な気がした。 身分が身分である、 自分から捨てられたというような気の毒な名は 立てさせたくないと思うのが 源氏の真意だった。 ここへ伺候して来る人の足音がしたので、 「これを隠そうかね。 男はこんな真似も時々しなくてはならないのかね」 源氏はいまいましそうに言った。 なぜお目にかけたろう…