かけがえのない他人、は、まどかにとって特別な意味を持つ言葉だ。 ホットケーキを食べたりおてがみを送ったりするような普遍的なことをしていても世界がきらめいて見えるような、他の人では代替不可能な関係のことを、かけがえのない他人同士と名付けていた。 『N/A』年森瑛 六月は、拒食症や性的マイノリティーをテーマ?にした『N/A』年森瑛(文藝春秋)を読んでいきます。 内容紹介松井まどか、高校2年生。うみちゃんと付き合って3か月。体重計の目盛りはしばらく、40を超えていない。――「かけがえのない他人」はまだ、見つからない。優しさと気遣いの定型句に苛立ち、肉体から言葉を絞り出そうともがく魂を描く、圧巻のデビ…