「宮様のほうから、 にわかに明日迎えに行くと言っておよこしになりましたので、 取り込んでおります。 長い馴染《なじみ》の古いお邸《やしき》を離れますのも 心細い気のすることと私どもめいめい申し合っております」 と言葉数も少なく言って、 大納言家の女房たちは今日はゆっくりと話し相手になっていなかった。 忙しそうに物を縫ったり、何かを仕度したりする様子がよくわかるので、 惟光《これみつ》は帰って行った。 源氏は左大臣家へ行っていたが、 例の夫人は急に出て来て逢《あ》おうともしなかったのである。 面倒な気がして、 源氏は東琴《あずまごと》(和琴《わごん》に同じ)を 手すさびに弾《ひ》いて、 「常陸《…