使い続けるということ。 おららの炭小屋のじいが、一本のノコギリを見せてくれた。刃の幅が細く、普通のノコギリでは切れない曲線でも綺麗に切れる。 「このノコギリでしかできないことがある」と、じいは得意そうに笑った。 しかし、このノコギリは最初から曲線を切るために細かったわけではない。普通の幅のノコギリを目立てし、使い続けることですこしづつ細くなり結果的に曲線が切れるようになったのだという。それにどれほどの時間が費やされたのか、すぐには想像できなかった。 次にじいは鹿の角で作ったケースに収められた小指の先ほどの小刀を見せてくれた。 「この小刀はもともとヤスリだった」と、教えてくれた。 ノコギリとヤス…