森博嗣著『孤独の価値』幻冬舎新書 読了 この本を読んでいるあいだ、ふと有名な映画のシーンを思い出していた。 黒澤明の名作『 生きる 』のブランコのシーンだ。 死期を覚った主人公が、雪の降る夜の公園でひとり、ゴンドラの歌を口ずさみ、ブランコをこぐ。 遺体となった主人公が発見されるのは、その翌朝だったと思う。 前夜に目撃した警官によれば、どこか楽しげだったという。 当時はまだ不治の病とされていた胃がんが発覚し、 なんの変哲もない人生を挽回しようと慣れない遊びに逃避した主人公だったが、何をしても充実しない。 そもそも自宅と勤務先をメトロノームのように正確に往復するだけの半生で、遊び方すら知らないこと…