まつりの家。大豪邸だ。 来るたびに圧倒される。初めて来たときには、めまいがしたっけ。高い黒壁に囲まれて、正面に車寄せ。 まつりが「こっち」と言って、通用門から入る。大門を開けるのが手間だからだ。内側でロックを外してもらう必要がある。 なだらかなスロープを通って玄関へ。ここだけで、僕の家の居間ぐらいある。廊下を二回曲がってスタジオだ。 スタジオって! まつりのお母さんが声楽家で、レッスン用の部屋なのだが、今はほとんど娘が使っている。ピカピカのピアノ。電子オルガンにシンセ。アンプやスピーカー。カラオケセットまである。もちろん防音は完璧。 まつりがピアノの前に座って言った。 「何か飲む?」 「ワイン…