雨が続くと、草むしりができない。外出も面倒だ。断捨離が少し進む。 劇作家でもあった川島順平教授が、下級生の初級フランス語をご担当なさった教室に在籍したことがある。見事な白髪痩身で、スマートな老教授だった。外国語の習得には極端に不熱心だった落ちこぼれ学生の私とっては、退屈な授業だった。教授が学窓というよりは劇壇のかただということすら、存じあげなかった。 「ぼくがパリィにいたとき、ちょうどアヌイが~」 リーダー訳読の合間の脱線噺で、パリ大学への留学時代のこぼれ噺になった。 おいおい、この人はジャン・アヌイとじかに会ってきた人かい。噺はおだやかじゃねえなぁと、眼を瞠った。いわゆる、一瞬にして耳がダン…