Executive Decision
乗客で満席のジャンボジェット機がアラブ系テロリストによってハイジャックされた。機には大量の神経ガスが積み込まれているらしい。アメリカ国防省は極秘で特殊部隊を空中で機内に送り込むが、いきなりトラブルが発生する。大きな戦力を失い、窮地に追い込まれた彼らは、1人のキャビン・アテンダントと密かに連絡を取って、打開策を練ろうとするが…。
『オーメン』、『スーパーマン』、『リーサル・ウェポン』などの名編集者スチュアート・ベアードの初監督作品は、手に汗握るサスペンス・アクションの快作となった。具体的で分かり易いアクション描写と、じりじりするような緊張感は、最近のMTV出身監督には無い地に足のついたもの。加えて、ひょんなことから特殊部隊と行動を共にすることとなった情報分析官役カート・ラッセルや、スチュワーデス役ハリー・ベリーののリアルな熱演によって、観る者に感情移入と緊迫感を持たせることに成功している。テロリストの首領役デヴィッド・スーシェも、TVシリーズ『名探偵ポアロ』でのポアロ役と打って変わって冷酷非情な役どころで、悪の説得力があって迫力がある。
この映画が公開されたとき、旅客機の裏側はこうなっているのか、と感心した人が多かった。テロリストたちに見付からないよう、特殊部隊隊員たちが、機内の裏側至るところに隠れている設定な為、天井裏や床下が丁寧に描写されていたのは新鮮だったのだ。後年の『フライトプラン』の先駆けでもある。
ベアードと旧知の仲である巨匠ジェリー・ゴールドスミスの音楽も、変拍子テーマ曲から効果的だが、画面と対等になっていて効果が増している。ゴールドスミスの音楽は、時として力の画面を打ち負かすことが多々あるが、本作は音楽に負けていない絵作りが成されている、とも言える。
*1:Rated R for violence and brief language.