2013年から7年間、私は島根県に有機農業アドバイザーを委嘱され、当初の4年間は毎年4回島根県を訪れた。農業技術センターで行われるワーキング(有機農業に関わる技術研究者と普及担当者の情報交換会)に出席して助言する役と、さらに県内各地を有機担当普及員と巡って現場指導する仕事だった。 島根県には、特異的な農業振興策があった。その一つに「産業農業とくらし農業」という区分認識があり、その両者をともに振興対象にしていた。全国的には「もうかる農業」などといって、島根県のいう産業農業だけを支援する制度設計になっている。ところが島根県は、小規模農家、兼業農家も地域農業の重要な役割を担っていると評価して支援対象…