『恋恋風塵』のワンシーンが映った時、思わず懐かしい感情が込み上げてきた。台湾の田舎に残る昔ながらの日本的風景というのではなく、古今東西の映画を観まくる若かりし頃の映画生活を始めるきっかけになったのが『恋恋風塵』だったという、昔の映画的記憶が懐かしさを伴いながら蘇ってきた個人的な体験からくるプライベートな感情である。オリヴィエ・アサイヤスが台湾を代表する映画監督の一人である侯孝賢に迫ったこのドキュメンタリー映画には、侯孝賢によって過去に撮られたいくつかの映画のワンシーンが度々挿入されている。侯孝賢の生まれ育った故郷や自作品にゆかりのある土地をアサイヤスと侯孝賢が一緒に巡りながら台湾の各地の風景が…