吾輩はカメである。名をカメ子という。この小さな水槽が吾輩の終の棲家であろうと、ふと考えると胸の奥に微かな翳りがさす。しかし、そこは生き物の知恵。限られた世界の中に、吾輩なりの楽しみを見つけてひそやかに暮らしている。 その最大の悦楽といえば、何といっても「食うこと」と「寝ること」である。 食う楽しみの章 ━黄金の晩餐 吾輩の食卓は、主人の「カメ子、カメ子、餌をやるぞ」の一声にて開幕する。この召喚の言葉を聞けば、吾輩は条件反射のように首を伸ばし、甲羅ごと主人の方へ進み寄る。「くれ、くれ」と前足を伸ばすその風情は、我ながらいささか品に欠けるが、食欲の前では体裁など吹き飛ぶ。 特に好きなものが皿に載る…