Saul Aaron Kripke: 1940年生まれ。アメリカの論理学者、哲学者。
公式サイト: http://web.gc.cuny.edu/Philosophy/kripke.htm
クリプキの生涯について
1940.11.13 ニューヨーク州ロングアイランド島ベイ・ショアで生まれる。父親はユダヤ教のラビ。
1946. 6歳の時にヘブライ語を独習でマスター。
1950. 小学4年生の時にシェイクスピアの全作品を読破したらしい。
1958. 高校生にしてアメリカ数学界の代表的学会であるアメリカ数学会で、様相論理の完全性について口頭発表。後に「クリプキ・モデル」の名を冠して呼ばれるほどの革命をもたらす。
1962. ハーバード大学で文学の学士を取る。
1966. ハーバード大学講師(哲学)。
1968. ロックフェラー大学助教授(哲学および論理学)。
1972. ロックフェラー大学教授(哲学)。
1976. プリンストン大学哲学科の教授に就任。
1977. コーネル大学教授(兼任)。
1997. プリンストン大学名誉教授に。
現在. ニューヨーク市立大学(CUNY)大学院教授。
クリプキの主な業績について
- 様相論理のモデル論を明確に与え、完全性証明を行ったこと。クリプキモデルはその後、様相論理に限らず、論理学の様々な分野で広く応用されるものとなった。代表的文献は高校生の時の口頭発表に基づく次のもの。
- "A Completeness Theorem in modal Logic", Journal of Symbolic Logic 24, 1959, 1-14.
- 『名指しと必然性』を発表し、いわゆる「指示の因果説」(クリプキ自身はこれが明確な「理論」であることに反対しているので、むしろパトナムによるとも考えられる)を提示する。また、カント以来のアプリオリ/アポステリオリの区別と、分析的/総合的の区別の違いを明確に与えた他、様相と指示の問題、自然種の指示などの問題を提示した。初出は次のもの。後に単行本として出版。ちなみに書名はカルナップの「意味と必然性」のもじりだと思われる。
- "Naming and Neccesity", in Davidson and Harman (eds.), Semantics of Natural Language, Reidel, 1972, 253-355 and 763-769.
- 代入量化についての論文を発表して、それまで不明瞭だった代入量化という考え方を明確にする。この論文はTharpとWallaceという二人の論文を辛辣に攻撃したもの。
- "Is there a Problem about Substitutional Quantification?", Evans and McDowell (eds.), Truth and Meaning: Essays in Semantics, Oxford, 1976, 324-419.
- 独自の真理の理論を提示して、うそつきパラドクスの議論に一石を投じる。
- "Outline of a Theory of Truth", Journal of Philosophy 22, 1975, 690-716.
- ウィトゲンシュタイン『哲学探求』における規則の議論を創造的に「誤読」して「規則のパラドクス」ブームを起こす。
- Wittgenstein on Rules and Private Language. Harvard University Press, 1982.
- その他、プリンストン大学では時間論なども講義され、どこかでタイプ草稿が出回っているとの噂もある。
日本語で読めるクリプキ関連もの
- S.クリプキ、黒崎宏訳、『ウィトゲンシュタインのパラドクス』、勁草書房、1983.
- S.クリプキ、八木沢敬・野家啓一訳、『名指しと必然性』、勁草書房、1985.
- 飯田隆、『クリプキ』、NHK出版、2004.
- 飯田隆、『言語哲学大全III』、勁草書房、1995.
- 野本和幸、『現代の論理的意味論 : フレーゲからクリプキまで』、岩波書店、1988.
- 山岡謁郎、『現代真理論の系譜 : ゲーデル・タルスキからクリプキへ』、海鳴社、1996.
- 三浦俊彦、「(知の先端の18人)ソール・クリプキ」、『大航海』1999年6月号、pp.132-137. ここで読める。
など。他、クリプキの論文が『現代思想』にいくつか翻訳されている。
おまけ
クリプキへのインタビュー。