文明 対 野蛮。 ヨーロッパ 対 アジア。 キリスト教徒 対 仏教徒。 一九〇四年二月に幕が上がった大戦争の性質を、ロシア政府はそんな具合に位置付けようと努力した。新聞も挙って書き立てた。これは国際法を重んじず、卑劣千万な先制攻撃をいけしゃあしゃあとやってのけ、しかも恥じ入る風もない無智蒙昧な異教徒どもを撃ち懲らす十字軍的戦争なのだと。 (奉天駅のクロパトキン) 中央の意を体するように、実際の戦場、満蒙一帯の至るところで露兵による寺院襲撃が相次いだ。仏堂の戸は蹴破られ、燈篭、香炉、美術的になにやら価値のありげなものは片っ端から掠奪されて、塑像は残らず粉砕された。これは十字架への熱烈な愛情という…