『大黒屋光太夫 帝政ロシア漂流の物語』(山下恒夫、岩波新書、2004年)を読んだ。天明二年(1782年)に駿河湾沖で遭難してアリューシャン列島のアムチトカ島に流され、さまざまな苦難の末に寛政四年(1792年)日本に帰還した伊勢の船頭・大黒屋光太夫(宝暦元年<1751年>~文政十一年<1828年>)の事績を紹介した作品だ。 帝政ロシアへの漂流の物語 光太夫が船頭をつとめる神昌丸は、大量の御用米などを積んで天明二年12月に伊勢湾の白子港を出港した。乗組員は17名。しかし駿河湾沖で嵐にあって漂流し、流されること8カ月、翌年7月にアリューシャン列島のアムチトカ島に漂着した。これだけでも奇跡と言っていい…