古い岩波の赤帯、1952年の譯。 16世紀の末葉、シャルル九世治世のフランス社会風俗を描いた歴史小説。サン・バルテルミーの虐殺を中心に、当時の社会を渦巻いていたカトリック・プロテスタントの宗教対立を主題とする。 長い序文で喋々と歴史論考をしている事から分るが、メリメは史学を扱う官吏であった。故に本小説の描写も、著者自身「読了した歴史書の抜粋である」と述べているが、どこか簡素で写実的。物語を展開する想像力・文章力はないのかと、悪く言う事もできようが...。 同時代の小説家の燃上る情熱を書き殴った書物の中にあって異端の落ち着きを湛えた(六等星の様な)作品。 ランキング参加中読書