〈昭和の忘れもの〉モノ・コト編㊷ 【片岡義男ワールドがバイブルだった頃】 タイトルに惹かれて手に取ったあの時以来、すっかりその小説世界に魅せられてしまった。 片岡義男は70年代半ばから80年代に一世を風靡した作家(著述家)である。現在も広く活躍されているが、バイク小説の先駆者であるその作品群と自身の若き日々がオーバーラップしていたことで、読者としての当時の熱量は尋常ではないほど高かった。 結果的に結構な数の文庫本が書架に並んだが、個々の作品の書評を書くつもりはない。ただ一連の“片岡義男ワールド”に傾倒し、バイブルとして現実世界の日常に投影しようと奮闘した、浅薄な愚か者がいたことを書き留めておこ…