ひどく苦しい晩であった。熱はとうに下がったのに、咳だけがゴホゴホといつまでも止まらない。一度始まると、吐きそうになるまで咳き込み続け、そばに置いてあるお茶を無理やり流し込んで止めるほかはないのである。 ただ、私には、なぜ自分が咳をしなければならないのか、明確に分かっている。それは口で説明するのは難しいけれど、一度これを目にしてしまえば、はっきり分かる。まさしく一目瞭然なのである。 私は同居する家族に、夜中にうるさく咳をするべき理由として、これを説明する必要があると感じている。だが、一目見せれば伝えられるそれは、私が目を開けると、途端に消えてしまうのだ。目を閉じるとすぐにくっきり姿を表すのに。 …