週刊誌アサヒグラフで1964年から2000年まで連載を続けた、團伊玖磨さんの随筆「パイプのけむり」。さよならパイプのけむりでの有終に至る全27巻からの撰集「味」を読みました。予予洗煉された麗筆と、夥多膨大な情報を小文で筆舌に尽くす筆力に圧倒されます。帯の解説抜粋は「博覧強記とかダンディなどという言葉には収まりきらない懐の深さがある」。氏はまさに「博聞強記」ではなく、自身の目と足で証跡を集積類聚し、其れ等を斟酌せず披瀝して読み手を鎧袖一触します。一文を書くために手間と時間を惜しまず、体験に裏打ちされた随筆を36年間書き続ける。勲しい偉業、強記の沙汰です。人間業とは思えません。「團伊玖磨」とは三井…