アヴィニョンの教皇宮殿 第四章 人間たち 第一節 教皇 1 クレメンス五世 クレメンス五世の行動は一貫性を欠き、フランス王権の理不尽な主張に十分に対抗しえていない。 クレメンス五世の気質は、きわめて慎重にして温和であり、極端な判断・決定を嫌い、妥協的であった。 しかしながら、アヴィニョン定住とテンプル団訴追という同時に進行した事態には、教皇側の利害も絡んでいる。 2 ヨハンネス二二世 イタリア派はガスコーニュ派の最年長である人物が候補者に選ばれたから。七十二歳で教皇に選ばれたが、ヨハンネス二二世は九十歳まで教皇庁に君臨した。 この十八年は、アヴィニョン教皇庁の基礎を築く重要な段階で、教義と教会…