現在番号付けられているモーツァルトの27のピアノ協奏曲群において最も壮麗な連嶺を成しているのは、自ら企画主催した予約演奏会のために書かれた第14番から第25番までの12曲で、特に後半の6曲は一際の威容を見せていると言うことができると思います。 その最後方に位置して、先立つ名曲を恰も前山に従えているかのように聳えるのが、「ピアノ協奏曲 第25番 ハ長調 K.503」です。 完成されたのは1786年12月4日で、翌5日にトラットナー邸で行われた降臨祭コンサートで初演されたのではないかと考えられているものの、これを裏付ける資料に欠け、定かではありません。 この作品の最大の特徴は、端正なドーリア式神殿…