ひと仕事終えて、手持無沙汰にしている私に、H女史はタイピングの手を休めて言った。「そういえば、兼子さんって、何歳でしたっけ?」 「35、今年36歳です。Hさんはたしか……32歳ですよね。2年前の夜勤中に30歳の誕生日を迎えたことを覚えていましたから」 「ああ、4つ違うんですね。30代の2年間って、あっという間に過ぎますね」 私にはさまざまな情報を総合して、人の年齢、特に女性の年齢を言い当てる嫌な趣味がある。心の中に留めて置けばいいのに、それを本人の前で口に出してしまうのだ。諜報機関の密偵スパイではないんだから、そういう露悪趣味はやめた方が身のためだろう。私の人生を生きにくくしている。しかし、面…