家から逃げ出すとき、自分以外のなにから逃げるというのか。さらば、と野生の若者が家好きの若者に告げた。 フォンターネ 山小屋の生活 (新潮クレスト・ブックス) 作者:パオロ・コニェッティ 新潮社 Amazon 孤独を求めて標高2,000メートル近い山の中に小屋を借りた「僕」は、気に入って手に入れたはずのその山小屋での日々にも疑問を抱くようになり、ザックに食料その他を詰めて、さらに標高の高い山の稜線の、その向こうを目指して歩き出す。 自然の中に身を置き、自然と対話する中で見つけたものは、結局自分自身だったのではないか。自然との対話は自分自身との対話だ。「僕」は山小屋に戻る。「野生の若者」は「家好き…