山内義雄譯、1925年新潮社上梓。メーテルランクの飜譯と云うのは、『青い鳥』と『ペレアスとメリザンド』以外、中々為されない。斯く云うこの『マレエヌ姫』も、管見の限りでは大正時代の山内譯が最も新らしい。山内は泰西戯曲の分野に多くの譯業を為した人。 本作を読んだオクターヴ・ミルボーは『フィガロ』紙上で、「美と偉大とに渇いてゐる人々をしてその名を讃へしむる傑作(...)沙翁の作中に於ける最も美しきものにくらべて、更にその美しさ一段と立ち勝つた作品」と推輓の辞を書いた。これによりメーテルランクは「白耳義の沙翁<シェークスピア>」の異名で呼ばれる事となる。 グリム童話『マレーン姫』の飜案。原作から設定や…